「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

フランス人が大規模な年金改革法案反対デモに託した思い

 フランスで昨日、歴史的な規模の市民のデモが行われました。パリ現地時間の31日の朝からツイッターでも続々と各地での参加者の模様と参加人数が報じられていきました。どこどこで3000人、どこどこで何万人という具合です。ともかく、昨日のデモは動員の数が大きな目標になっていたことは間違いありません。社会党第一書記のオリヴィエ・フォールは「これなら成功と言えるだろう」と日中、ツイートしました。実際、主催者の1つでもある労組CGTは全国で参加者は280万人と発表しました。フランス内務省は128万人と約半分の数字を掲げ、日本のメディアは主催者ではなく、取り締まる側の内務省の数字をそのまま記載していました。

  22歳で、フランス本土では最年少で下院議員に当選した大学生で、LFIのルイ・ボヤール議員によると、200もの高校で学生たちが学校を封鎖したほか、数十の大学でも学生たちが抗議に参加したとされます。すなわち、年金改革法案は若者たちにとっても重大な問題だという風に認識されているのです。決して高齢者や年配世代だけの目先の問題などではありません。

  そして、もう1つこの抗議デモを成り立たせたのは、マクロン大統領のもとで首相になったエリザベト・ボルヌ首相が国会で49-3という非民主的な手法を用いて予算案や法案を次々と強引に成立させてきたことへの怒りがあるのだと私は想像しています。この49-3というのは憲法49条3項の規定で、下院の議決をしないまま、首相が内閣の信義をかけて一存で法案可決させてしまう、というものです。もちろん、それは歯止めがないと独裁になりますので、一応、49-3が適用されてから48時間以内に内閣不信任案が野党から提出されて、もし議員の過半数が不信任案に賛成したら内閣は解散しなくてはならないのです。ボルヌ首相がこのような非常手段を連発しているのは、昨年の下院議員選でマクロン大統領の新党が議員数を減らして過半数を割り込んでしまったことが響いています。これはフランス版野党共闘の成果でした。

  そして、ボルヌ首相は放置しておくと、年金改革法案すらも49-3を使って、国会での議決をすっ飛ばして通してしまいかねない、という不信感あるいは不安感から、労働者や市民は国会以外の場で、民衆の力を示す必要がどうしてもあったのです。若者たちも多数参加しているフランス人のこうした闘いを見れば、フランスでは政治を人々が変えていけるという信念が生きていることがわかります。

マクロン大統領が近い将来の下院解散を示唆 選挙での敗北で国会運営に支障 ボルヌ首相は49-3という非常手段の連続

 

  本日、年金改革案に反対する労働組合と市民による大規模デモが行われるフランス。2022年の下院議員選挙で議員数を減らして過半数を割ったマクロン大統領の「前進」は、ボルヌ首相によって49-3という下院での議論と評決をすっ飛ばして予算案や法案を作成する非常手段を続けてきた。この年金改革案でも野党の反対が強く、法案を通すなら、またまた49-3という下院での議決を飛ばすしかないだろう。しかし、これほどの重要法案を国民の代表である下院の議決をすっとばして通してしまえば、もはや政府は国民の信頼を永久に失ってしまうだろう。そもそも、世論調査でも圧倒的多数の国民が反対しているのだ。

  そこで、マクロン大統領は大統領の権限を用いて、2027年に予定されている下院議員選挙を前倒しして、下院を解散し、選挙をそれまでに行うと示唆した。過去の例では、総選挙によってさらに国会でのパワーを失って窮地に陥ったケースもあるとされ、マクロン大統領にとってもリスクの高い判断となる。大統領が解散権を行使できるのは選挙から1年後である。前回に続き、今回の大規模ストライキが成功すれば、ますますボルヌ首相は国民の力を無視できなくなるだろう。

※INFO EUROPE 1 - Emmanuel Macron envisage une dissolution de l'Assemblée avant 2027

  ヨーロッパ1の報道では、マクロン大統領はル・ポワン紙のインタビューで下院解散の意向を語ったとされる。ヨーロッパ1の記事では、大統領の側近たちは皆賛成しているらしく、もし選挙で過半数を取れない場合、最もありえるのは極右の国民連合が過半数を奪う可能性だと考えているそうだ。その場合は、マリーヌ・ルペンを首相に任命して、マクロン大統領とルペン首相という保革(?)のコアビタシオン政権となる。そして、そうなると2027年の大統領選挙前にルペン首相の政策を叩くこともできて、大統領選で彼女のパワーを削ぐことができるという読みもあると書かれている。マクロン大統領は、極右への防波堤だというアピールで左派の支持者からも票を集めてきたのだが、いよいよここに来て、極右政党とのコアビタシオン政権を結成することもマクロン大統領たちが視野に入れていることが判明した。

立憲民主党の思想的系譜~野田政権発足時の民主党の「転換」を振り返る~

 

  立憲民主党が右傾化運動の柱になったことを先日記しました。立憲民主党に関しては、その立ち上げ時の期待を思い返すと、残念です。また、優れた議員も数多く存在しているだけに、現在の執行部の方針には疑問を感じます。とはいえ、旧民主党の思想的系譜においては右傾化は当初から組み込まれていて、いざとなれば必ず自民党に助け舟を出すという行動を繰り返してきたのも事実なのです。特に、民主党の没落の原因となった野田首相時代のことを振り返ってみます。当時、民主党議員だった長島昭久氏が著書で書いていることです。以下、2015年に書いたものの一部を採録します。

長島昭久著『「活米」という流儀 ~外交・安全保障のリアリズム~』 民主党・長島議員の外交・防衛政策と安倍政権の外交・防衛政策は極めて近い

 <長島氏は野田政権発足の時のことをこう記している。

  「野田政権発足に際し、私たちは大方針を定めました。これは、久しぶりに本格的な「ドクトリン」と呼ぶべきもので、3つの柱からなっています。1つ目が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を中核とする経済連携、貿易と投資のルールづくり、2つ目が安全保障、とりわけ海洋のルールづくり、3つ目がエネルギーをはじめ戦略資源の安定供給のためのルールや仕組みづくりです。・・・・これによって、明確に、鳩山政権時代にめざしていた「東アジア共同体」構想、つまり中国を中心とする秩序に米国抜きで不用意に入っていくという考え方と決別したのです。」(長島昭久著『「活米」という流儀 ~外交・安全保障のリアリズム~』から)>

  2009年の鳩山代表の時の選挙運動の柱の1つが、沖縄から米軍基地を撤退させることと、消費税は当分凍結すること、さらに東アジアの平和構想だったことは多くの人の記憶にあると思います。ところが官僚たちの抵抗も強く、沖縄からの米軍基地撤退の政策は頓挫し、鳩山首相は辞任しました。その後、菅首相を経て、野田首相に移りましたが、この時に政策を大転換して、自民党と瓜二つになったことを覚えている人は多いでしょう。消費税引き上げも2012年の大飯原発再稼働もそうです。そして、野田氏は現在の立憲民主党の議員であるだけでなく、最高顧問という位置にあります。安倍元首相の国葬でも弔辞を読みました。旧民主党~そして現在の立憲民主党の中には、左派に党が重心を移そうとすると、自民党にボールを渡す人脈が存在しています。これは長い日本の歴史を経て形成されてきた権力の知恵でしょう。現在、立憲民主党代表の泉健太氏もこうした系譜に位置すると見えます。私は政権交代を封じるこの動きを「野党第一党によるキャップ効果」と呼んでいます。

  私は自民党的な考え方、立憲民主党の野田氏のような考え方が政界にあっても構わないと考えています。決してそれを否定するものではありません。ただ、1990年代以後、二大政党制を目指し、小選挙区制の選挙制度に制度設計した以上は、国民が政策をめぐる選択肢を持てることが民主主義にとって必要です。二大政党のどちらでもほとんど変わり映えしない政策であっては、それ以外の考え方の多数派の国民が絶望しますし、棄権票も増えていきます。実際、棄権が戦後、最高値に達しています。

  つまり、民主主義においては、考え方を異にする政党間の政権交代があることがとても重要なのです。それが民主主義のストラクチャーです。民主主義のストラクチャーがあることは、どちらの陣営にとっても大切です。というのも、絶対権力は絶対的に腐敗するからです。政権交代がない国は政治家たちは公私を混同し、官僚たちも国民のためでなく自己の利害のために行動するため、必ず腐敗します。今の日本はまさにこの状態に陥っています。経済や研究力などの活力が落ちているのはその証です。それを是正するには、野党第一党自民党とは異なる政策を取る政党であることが必要です。そして、それは単なる「やってる感」といった見せかけではいけないのです。

1月31日にフランス政府の年金改革法案(年金受給年齢62歳→64歳)に各地で反対の大規模ストライキ

 

前回100万人超の参加者となったマクロン大統領のもとで進行中の年金改革案に反対の労働者・市民が、明日1月31日、再び大規模ストライキを計画中です。パリだけでなく、各地で行われて、民衆の力を見せる模様。この年金制度改革案はボルヌ首相が進めているもので、年金受給年齢を現在の62歳から64歳に引き上げようというものです。

 これに備えて、内務大臣のジェラール・ダルマナンは11000人の警官と憲兵を動員し、パリには4000人を配置すると警戒態勢を発表しました。フランスの市民・議員・労組は、やってる感満載ではなく、本気で年金改革を阻止する構えです。


※Mediapartでエコノミストが政府改革案を批判

 この動画では、エコノミストのミハエル・ゼムール・パリ大学教授(Science Po教授でもある)が、1つ1つ政府の説く通説に対する反論を行っている。大筋としては、政府が主張している年金の財源不足論はオーバーだというものです。また、前回60歳から62歳に引き上げたばかりでもある、と。


■日本の大メディアによる、フランスの年金改悪反対デモの伝え方  朝日新聞NHKもデモへの冷笑的視点で描いてきた


■フランスの年金制度改革へ女性たちが反対を示す踊り 「マクロンのせいで~」 踊る女性たちに聞く


■パリの議会ではエドワール・フィリップ首相が反民主的な憲法49条3項を使って議決なしに年金改革法案の通過を狙う


■「マクロンのせいで・・」 パリ東駅でアタック・フランスの女性メンバーが年金改革への抗議のダンスを披露

ゴミ箱が公共の場から減少して

  私が近年、残念だと思っているのが公園その他、公共の場からゴミ箱が減少していることです。弁当をようやく見つけた公園で食べたとしても、捨てる場所がないとカバンに入れて持ち運ばないといけません。これだけでも、消費を押し下げる要因になっていないのでしょうか。さらに、図書館の前の庭にも、図書館にもゴミ箱がなくなってしまいました。おまけに駅でもホームのある階層にはゴミ箱がありません。自販機は街にたくさんあっても回収用の箱はとても少ないです。こういったことが、街を残念なものにしている気がします。