「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

ドイツの放送局DWが米製造業のリショアリング(国内回帰)を報道 10年前とはけた違い

  先日、ニューヨークタイムズが報じた米製造業の国内回帰についてお伝えしました。これはつまりコロナ禍でアジアでの製造拠点から製品や部品の流れが滞ってしまい、米国での流通や生産に影を落としていることから。ドイツの放送局DWもこれについて報道しています。部品が滞ってしまったことや石油価格の高騰によって10月の生産者の時点での製品価格は8.6%も上昇したと伝えています。記事ではGMがバッテリー生産工場を米国内に建設する予定で、USスティールも新工場を海外に立てる予定だったのを米国内に変更、ロッキードやGEなどもその流れに続いて検討しているようです。インテルも米国内に新設することにしたようです。業界のリサーチによれば、こうした企業は1800社あまりにおよび、1年間で米国内に22万人の雇用を創り出すとのこと。10年前にオバマ大統領がリーマンショック後に自動車メーカーなどを再建するために必死で努力し、税制支援などしながら製造業のリショアリングを進めたにも関わらず当時はせいぜい6000人の雇用が生まれた程度。それも全米労組が様々な待遇カットに応じて経営陣と協力体制に転換することが必要でした。その意味では今回のコロナ禍は業界の構造レベルで、40年ぶりに変化の波が訪れている模様です。

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  そして、今、大統領がバイデン大統領であり、まさにオバマ大統領の副大統領だっただけに、製造業の国内回帰は選挙戦でもテーマの1つとして語られたことでした。バイデン大統領は、付加価値の高い製造業の国内回帰と環境対策を軸とした新しい製造業の創出こそが中流階層の拡大をもたらし、米国の格差を縮小できると考えています。その意味ではコロナ危機によって生まれたチャンスを、バイデン大統領は必ず活かそうとするはずです。

 日本がこの状況から、どのようなヒントを得られるかと言えば、90年代からグローバル化で輸入に頼ってきた国内市場に、新しい変化を起こせるかどうかがカギとなるでしょう。

 

 

テレビ東京のインターネット配信ニュースで見るウクライナ情勢

 

 

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 テレビ東京YouTubeウクライナ情勢をまとめたドキュメントをUPしています。テレビ東京のこの報道の特色は、いったい何が起きているのか、ロシアとNATO、そして、ウクライナの住民、さらにウクライナにおける対立をできるだけ多角的に入手映像や撮影映像を豊富に盛り込んで描いていることです。  ウクライナとの国境沿いにロシア軍を集結させているプーチン大統領の会見で「(NATOが)口頭で約束したことが守られていない。だから保証が必要だ」と語っていたのが印象的です。つまり、NATO側が、NATOのこれ以上の東方拡大をしない、と口約束していたと受け取れる発言です。(ここはもっと知りたいところでしょう)ウクライナが将来的にNATO加盟を目指している、というウクライナの首脳陣の方針がロシアをこのような行動に駆り立てていることが理解できました。

マルク・アレグレ監督「Zouzou」(ズーズー) 昨年、パンテオン入りしたジョゼフィン・ベーカー主演の映画

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  昨年、近代思想家のジャン=ジャンク・ルソー、科学者のキュリー夫妻や哲学者のベルクソンらフランスの「偉人」が納められているパンテオンに、黒人ダンサーで女優のジョセフィン・ベーカーさんが納められたことが話題となりました。ベーカーさんと言えば腰蓑一つで、激しいリズムの熱狂的なダンスで知られていましたが、パンテオン入りした理由は対独レジスタンス活動やその他の人道的行動がフランス国家から評価されたのだと聞きます。

  多くの人はなぜ今頃?と若干驚いているかもしれません。マクロン大統領の来年の大統領選挙を意識した人気取り、と解釈する人もいるようです。ともかく、ベーカーさんのパンテオン入りは黒人女性としては初ということで、普通に歓迎する人は多いようです。

 ただ、ジョセフィン・ベーカーさんの偉大さは、レジスタンス活動などよりも、ダンスや演技そのものにあることは疑いようもありません。ジョセフィン・ベーカーさんの凄さが垣間見える映画が「Zouzou」(ズーズー)というタイトルの1934年の映画です。この映画は、日本では「はだかの女王」という邦題。現代の感覚で言えばこの題はいただけないでしょう。実際、彼女は肉体美をさらしてはいますが、全裸でもトップレスでもありません。共演の名優ジャン・ギャバンを圧倒する存在感のある主演として、その力強い感情の表出で胸を打ちます。

  物語はシンプルです。サーカスの心優しい興行主に引き取られた二人の孤児は、一人が白人の少年で、一人が黒人の少女。この二人が大人になって、ベーカー演ずる黒人女性の方が、ギャバン演ずる白人男性に恋心を抱くようになります。しかし、男の方は彼女に兄弟姉妹としての愛情はあれど、恋心は外部の白人女性に抱く。ですから、失意の物語です。思いがかなわない女性の心情を、ベーカーさんはとびぬけた明るさと、落ち込んだ時の絶望と、心の両面を見事に表現しています。映画では人種的な面にはスポットを当てて描いてはいません。現代からすると、ストーリーには多少、強引さが感じられますが、見た方がベーカーさんの魅力にとらえられることは間違いありません。この1934年の映画が突出しているのは黒人女性の内面を、ベーカーさんが主役として見事に演じきったこと、そしてこの映画が興行的にも成功したということにあると私は思います。

■映画「Zouzou」(1934)から

米製造業のリショアリング  製造工場がコロナで再び米国内へ

   ニューヨークタイムズの以下の記事は日本人にとっても他人事ではない重要な問題を伝えています。工場の空洞化、生産施設のオフショア化の問題です。冷戦終結後、日本の生産施設が次々と中国に移設された結果、日本国内の労働者の賃金が低下していったのは記憶に新しいところです。それまで戦後ずっと右肩上がりの給料だった常識が覆された瞬間で、まさにこれこそ、驚きでした。私が映画の学校を卒業して世に出たのは1992年でしたが、まさに日本がどんどん貧しくなっていった時期でした。貧しくなったと言っても、グローバル化で海外から安くて美味しい食材が入ってきますし100円ショップなどもできたので、それまで知り得なかった食材に出会えたという局面もありますが、全体的には空洞化によって労働者が不安定な雇用にさらされたり、低賃金が当たり前になったりしていきました。ですので、工場をもう一度、国内に戻すためにはどうしたらよいのか?という問いかけを私はよく自問しました。とにかく製造業が日本では稼げる産業だったわけですから。そして、米企業が中国から工場を呼び戻す努力をしている現場をオバマ大統領の時代にTV取材したこともあります。以下の記事は、コロナ禍が皮肉にも米製造業にリショアリング(工場を国内に戻すこと)の流れを作り出したことを伝えています。

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  この記事では、コロナ禍でサプライチェーンが断絶し、生産が滞るなどのトラブルが、生産コスト以上に大きな問題になりつつあり、確実に生産=販売の流れを維持するために米国内や隣国のメキシコなどに工場をアジアから呼び戻す動きが起きていることが示されています。さらに、地球温暖化対策が拍車をかけて、化石燃料を消費する長い輸送をやめる動きも、リショアリングの後ろ盾となっているとされます。食の世界では地産地消と呼ばれて、このことは従来から訴えられてきましたが、ようやく米国の製造業も動かし始めているようです。ハイテクや高度のテクノロジーを必要とする工場ほど国内回帰がしやすく、人手を大量に要する工場ほどなかなか米国内に戻せないという、リショアリングが製造ラインの違いに影響されることについても触れています。記事では実際にリショアリングの労働者数への影響が顕著に見えてくるのは2020年代の末になるだろうという関係者の声を伝えています。

 米国にとってメリットは、日本よりも高齢化が進んでいなくて、製品を購入する市場が国内にある、ということがあります。この点、移民を受け入れてきた国ならではのダイナミズムを感じます。

 

 

 

 

 

シャンソン歌手フランソワーズ・クシェイダさんのYouTubeチャンネルを発見した

  昨日、僕は歌手フランソワーズ・クシェイダさんのYouTubeチャンネルを偶然発見してしまったのです。フランソワーズ・クシェイダ(Françoise Kucheida)、皆さん、ご存知でしょうか?僕は2枚CDを持っています。大資本のレコード会社に発掘されることもなく、フランス北部のパ・ド・カレーという地方の幼稚園で働きながら、お祭りで歌っていた時にたまたまそこを訪れていたピエール・バル―という大物歌手に見いだされ、47歳でプロデビューしたと僕の持っているCDの説明書きには書かれています。つまり、歌唱力がべらぼうに高く、人の心にぐっと差し込む魅力があるのです。ところで、僕が驚いたのは、そんな歌手なのに、このチャンネルをサブスクライブしている人数が41人ってどういうことなんだ?と頭をひねってしまいました。

 歌唱力の乏しいタレントが何十万ものフォロワーを持っている一方で、こうした歌手は知られないまま、ひっそりと咲いているのです。ウィキペディアを参照すると、5枚のCDを出していて、映画「男と女」でボサノヴァを歌っていたピエール・バル―のサラヴァというインディペンデントのレーベルからです。バルーに発掘されたのは1993年とありますので、バルーが亡くなった後は、再び地方で咲く歌手に戻ってしまったのかもしれません。

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欧州連合とハンガリー 民主主義からの逸脱に経済制裁がくだされるか? 

  ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相と言えば、民主主義を基盤にする欧州連合の中で、独裁化・極右化を激しく進めてきた国として象徴的な存在です。メディア統制やゲイに対する抑圧、移民支援者の罰則化などでしばしば報じられてきたうえに、コロナ禍では首相の権限を無期限に議会のチェックを受けない形で独裁化する法律まで作り、事実上の独裁政権となっています。

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  これに対して、ニューヨークタイムズはこれまでオルバン首相に対して宥和政策を続けてきた欧州連合ハンガリー経済制裁を科す可能性が高まっていることを記事にしています。欧州連合加盟国に与えてきた経済的な支援を、欧州連合の基盤を踏みにじっている反民主的なハンガリーには認めないという事実上の経済制裁であり、欧州連合内部における闘争が進められていることが明白になってきました。このニューヨークタイムズは非常に興味深い内容です。ハンガリーを始め、ポーランドチェコなど東欧のこれらの国々が反民主主義化を深めていることへの制裁に踏み出したわけで、これはかつての欧州連合の東欧拡大から考えると、ついに新しい時代に踏み出したことが感じられます。このオルバン首相はフランスの極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首とも仲が良く、昨年もルペン氏が訪問していたことが記憶に新しいです。

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  欧州連合では今月、ハンガリーに政策を課すかどうかが決定される予定だとされています。

 

BSキャンパスex特集『大学の遠隔教育はどこへ向かうのか』 放送大学(BS 231ch)にて1月8日(土)より放送!

 過去50年間かけてコツコツ世界で進められてきた遠隔教育が、昨年来、コロナの影響で大きな飛躍を遂げています。このZOOMを使った国際シンポジウムでは世界の一線の遠隔教育の研究者たちが、高等教育の未来について真剣に情報交換を行い、予測しています。ご覧ください(村上)

www.ouj.ac.jp