「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

『歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語』(語り手・真野倫平)フランスを読む#27

 「フランスを読む」では南山大学の真野倫平教授にイヴァン・ジャブロンカの「歴史家と少女殺人事件 レティシアの物語」についてお話しいただきました。ジャブロンカは歴史学者ですが、作家としても著名で様々な賞も受けています。この本は歴史学者がメディアを騒がせた殺人事件に独自のアプローチを行い、新しい境地を開拓した傑作です。真野教授は本書の翻訳者です。大変興味深い話でした。

 

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米劇作家エドワード・オールビーの”遺言”  Civics(市民論・市政学)の教育を取り戻す必要がある

   私は若い頃、法学部で学んだ後に、本当にやりたかったドラマの勉強を専門学校でしました。その頃、いろんな劇作家やシナリオライターの作品を読んで魅了されたものでしたが、エドワード・オールビーもその一人でした。彼の晩年のメッセージを私は非常に興味深く聞きました。これは彼の遺言だと感じました。

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表現の自由とネットメディア 統一教会をめぐる投票日前の報道をきっかけに

  安倍首相が暗殺された翌日の朝刊は各紙ともまったく同じ見出し「安倍元首相 撃たれ死亡」というもので、ネット世界では多くの人が大手5紙を並べて、その異様さを見える化していました。これを見たら、報道の自由はもはやこの国になくなったのだなと多くの人は思うに違いありません。しかも、宗教団体という言葉はあっても統一教会という具体名は伏せられていました。これもまた異常な事態でした。


  統一教会という名前が伏せられたプロセスに具体的に何があったのか、と疑問に思った人は少なくないでしょう。それについて初めて筆者が知るきっかけとなったのが、デモクラシー・タイムスのYouTube動画「肌感覚で知る永田町の統一教会 有田芳生さん」でした。
 


 これは統一教会に詳しい参議院議員有田芳生氏をゲストに迎え、情報に富んだ優れた番組であったと思います。この中で、ノンフィクション作家の山岡淳一郎氏が興味深い発言をしているんです。タイムコードでは、1:06:55あたりから。
 安倍首相が狙撃された後、警察は報道記者たちには統一教会という名前を出していたと言うのです。ですから、統一教会の名前を伏せたのは各新聞社、マスメディアの自主的な判断だったらしいのです。そして本来はIndependentで最も自由であるはずのYouTubeの「デモクラシータイムス」ですら、統一教会の名前を知りながらも、7月9日土曜日の番組では名前を自主的に伏せたと山岡氏は告白しています。

 いったい何を恐れてかというと、YouTubeからチャンネルを停止させられる恐れを感じたから、と言うのです。これは<公平性を欠いた報道を選挙前にしたら電波停止にする>という高市早苗総務大臣の恫喝で腰が引けた民放各局と通底しています。山岡氏は、YouTubeは私企業であり、どんな理由でチャンネルを止められるかわからない、とその恐れを率直に述べています。これは、かなり重要な話だと私は思いました。たとえば、ある圧力団体のメンバーが一斉にYouTubeに抗議を送るとか、そういう圧力もあり得るのです。素晴らしい報道をしたら大丈夫というのとは次元の違うところで、物事が決められていく可能性があるのです。

  YouTubeの独立メディアがチャンネルを停止させられる脅しを受けるのは過去にも例があります。デモクラシータイムス自身も一方的にコンテンツを削除されたことを経験しているとのことですが、ジャーナリストの岩上安身氏が運営するIWJも、1年前、ワクチンをめぐる報道で、YouTubeから動画を一方的に削除されています。


 IWJは同じ動画をUPした外国特派員協会には何のおとがめもなく、IWJだけ削除されるのは納得ができないとしています。しかも、今後も同じようなことを繰り返せばチャンネルがつぶされてしまう恐れもあったのです。

 「2回目の違反警告を受けると、2週間コンテンツを公開できなくなる。90日以内に3 回目の違反警告を受けると、チャンネルはYouTubeから永久に削除されてしまう。今回の違反警告の有効期限は10月12日まで。しかし、どのような基準で『ポリシー』に反するのか分からなければ、いつサドンデスのようにチャンネルが削除されるか分からない」(IWJ)

  過去何年もコツコツ積み重ねてきたコンテンツが一瞬にして無に帰す恐ろしさを想像すると、山岡氏の発言の感じがより理解できるでしょう。IWJは削除されたコンテンツをVimeoに再度UPして抵抗しました。大手メディアはコントロールされているが、独立メディアは自由だ、とは完全に言い切れない問題が存在していて、自由な報道を脅かしているのです。

 

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アベノミクスとジニ係数  ~所得再配分後の数値に定義変更したら、労働者の所得格差は隠ぺいされるのではないか~

 最近、TVで知名度が上がって来た社会学者がある記事を推奨していたので読んでみると、安倍政権下のアベノミクスで貧困の程度を示すジニ係数が減少していたというのである。それはビジネスジャーナルの「『アベノミクスで格差拡大』という誤った認識が流布した理由…ジニ係数の読み方」というものだった。読んでみると、ジニ係数は1990年代半ばの0.44あたりから急激に右肩上がりで上昇し、第二次安倍政権の中盤で峠(0.57あたり)を越えたかのように減少傾向に転じて2017年に0.56あたりになる。とはいえ、20年近く右肩上がりで上がって来たものだから、減少傾向に転じたとはいっても、この記事のグラフでは0.01減少したというだけなのだ。そもそも2021年10月の記事だが、ジニ係数の数値は2017年までしか掲載されていない。その後も改善されていくような印象の→が付されているのだが、その先は数値が出ていないので読者にはわからない。

  一方、この記事では所得再分配後のジニ係数再分配所得ジニ係数)こそが重要だと説き、したがって安倍政権下で格差は縮小したと絶賛しているのである。2005年あたりに0.38をつけた後は、一般に減少傾向にあり、2017年は0.37台である。2008年から2011年にかけて微妙に上昇するのはリーマンショックの直後だからだろうか。「下がった」と鬼の首を取ったように言っているが、0.01変化しただけであるし、再分配前に比べると変動は少ない。格差を減らす方向に社会保障で手当がなされるからだ。

  この記事や社会学者の主張したいことを端的に言えば、手取りの給料がどれだけ格差が拡大しても、社会保障で緩和すればよいではないか、ということに尽きるように私には思われる。そして、この記事では税によるジニ係数の改善度はなぜかとても低い。税金で富裕層かから多くとるのではなく、社会保障で手当すればよい、というメッセージと読める。

  しかし、ちょっと待てよ、と思ってしまう。まず、ジニ係数を再配分後の数値にすることはジニ係数の意味合いを従来から大きく変えることではないのだろうか。ウィキペディアで恐縮だが「ジニ係数(ジニけいすう、英: Gini coefficient)とは主に社会における所得の不平等さを測る指標である。0から1で表され、各人の所得が均一で格差が全くない状態を0、たった一人が全ての所得を独占している状態を1とする」とあり、ジニ係数は所得の不平等さを図るための基準であるのだ。それは再配分前だからこそ意味があるのではなかろうか。社会保障で手当てすれば、所得の格差は広がっても構わないのだろうか。記事はそう主張しているように感じられる。しかし、そういう風にジニ係数の意味を逆転させれば、所得の格差が見えなくなってしまうだろう。そして、そのことは日本における労働者の待遇と所得格差の源泉となっている労働者派遣制度あるいは非正規雇用の実態から目をそらさせることにもなりはしまいか。ジニ係数とは何のための指標なのか。

  安倍政権のレガシーには公文書改竄や統計の偽造あるいはおかしな統計がある。統計のやり方を急に変えて数値が改善されたように見せかけたことが安倍政権時代に告発されていたことを覚えている人は多いのではなかろうか。社会保障で補えばよい、という方向でのジニ係数の再定義の勧めだが、実際には生活保護を受けている人がバッシングされるのはしばしば起きている。たとえば生活保護を受けている人がたとえば、パーマをかけたら贅沢だなどとバッシングされるのである。そもそも社会保障に頼らなくてもよいような制度を作ることこそが政治の優先課題なはずである。


■安倍首相が誇る雇用増の実績は本当? ファクトチェック(2019年 朝日記事)

 「総務省労働力調査(年平均ベース)によると、企業や団体などに雇われている雇用者のうち役員を除いた働き手は、第2次安倍政権発足後の2013年から18年までの6年間で383万人増えた。『380万人増』という主張は正しい。ただ、増えた働き手のうち55%はパートやアルバイトなど非正規で働く人々が占める。非正規で働く人の多くは所得が少なく、不安定な生活を送っている。総務省が5年ごとに公表している就業構造基本調査によると、非正規で働く人の75%が年収200万円未満だった。」

アベノミクス偽装!! 実質賃金がマイナスでは消費税増税はできない!? 経済対策などあらゆる面に影響~国会パブリックビューイング「毎月勤労統計不正調査問題」緊急街頭上映 2019.1.28 (IWJ)

安倍首相狙撃事件がTVとYouTubeコンテンツの価値観の逆転の契機となりつつある

 TVとネットメディアの関係は、かつてはネットメディアは胡散臭い、素人、質の低さという風に見られていましたが、安倍首相の暗殺事件をきっかけに逆転してしまった感があります。これはTVメディアが核心部の情報を結束して国民に隠していたことが見えてしまったからで、2011年の原発事故から第二の波が来たと思いました。かつてなら地上波でやっていたような検証番組が今はYouTubeで行われています。参院選挙の直後にも有田氏が登場した検証番組がYouTubeで行われて、そこでは安田浩一氏らも参加して、非常に多くの情報が得られました。メインストリームのTVがYouTubeを後追いしている印象。

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