「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

詩に満ちたジェンナロ・コンタルド氏のイタリア料理YouTube番組

 僕がファンになっているYouTubeチャンネルが、イタリア人のシェフ、ジェンナロ・コンタルド氏によるイタリア料理の番組です。コンタルド氏はロンドンで店を経営していた関係で英語に堪能で、しかも英国の料理番組に出演していた人です。実にサービス精神たっぷりで、イタリア人らしい豊かな表現力も魅力です。この枠はJaimie Oliver氏のチャンネルで客演という感じです。イタリアの田園でパスタを作るコンタルド氏を見ていると、お金をかけて作っている日本の旅番組と変わらないですね。こういうのがYouTubeでできてしまう時代なのです。

www.youtube.com

本に囲まれていた日々

 この数年を振り返ってみると、引っ越しをして生活が大きく変わったことがあります。激しい台風で一人だけ最後まで住み続けていた集合住宅が痛んでしまって、そこを 退去しなくてはならなくなったのです。この引っ越しの作業はきついものでした。30年近い間に倉庫などにため込んでいた壊れたプリンターやラジカセ、デッキ、蛍光灯といった無数の廃物、自転車、木製箪笥や金属製の組み立て式の本棚、それに大量の本やCDを処分することになりました。また、10数年分の撮影済みのミニDVテープも1本1本壊しながらすべて処分しました。昔、情熱をこめて撮影した1時間、1時間のテープはたしか300本以上ありました。ある種の自分の生前葬をしているような気がしたものです。

 私がTVのディレクターとして働き始めた1990年代はまだインターネットはほとんど発達していなくて、調べものも図書館や役場、関係者に足を運んで情報を得るのが基本でした。そして、夜中に企画書を書いていると、必要な時にすぐ手元に置いておきたい資料や事典、基本文献などが様々な分野であり、そういったものをリアルな物質としての本としてためておく必要がありました。そういうわけで長年の堆積の結果として4000冊くらい本があり、倉庫2つと書庫1つを持っていたのです。ですので、そうなってくると滅多なことで引っ越しもできません。あの頃は本を持っていることは金を銀行に持っている事よりもリッチな気がしたものです。それを考えてみると、この30年近い間に、本との関係は大きく変わりました。転居先をすぐに見つける必要もあり、景気も悪かったわけですから、前の古いアパートみたいな本を蓄えておく広いスペースを見つけることは不可能で、4000冊あった本から200~300冊ほどを選ぶのが、一番きつい作業でした。どの1冊にも愛着があり、それを置いていく、処分する、というのは身を切られるように辛い作業です。その時、私は一度、人生が終わったのだ、と考えました。もう昔と同じ人生はこの先にはないんだ、と。それで、本を選ぶにあたっては、これから先に残された数年か、10年か、20年かわかりませんけど、その時間に必要になるであろうものだけを転居先に持っていくことにして、それ以外のものはいかに面白くて良い本であろうとすべて処分しました。

 この作業は1つの人生の終わりの儀式であったように思います。もう昔のように生きていくことはできないのだ、と。

 

 

 

 

 

 

夏休みが終わり、「フランスを読む」も再開です!

YouTubeチャンネル「フランスを読む」は7月から、UPが滞っていました。原因は語り手の方々の多くが夏休みに入ってしまったことと、私自身も忙しくて毎回10分程度の動画とは言え、番組を制作する余裕があまりなかったことでした。YouTuber向けのアドバイス本などを読むと、登録者を増やすためには定期的にUPしないと駄目だ、というのが常識です。ですので、最初は困ったな、と思ったのですが、このチャンネルは金もうけのためにやっているわけではないのです。語り手も撮影編集側も全員が手弁当でやっているがゆえに、仕事やプライベートなこととバッティングしたら、無理せずできるところで一人一人が参加できるところでやるしかないと思うんですね。それが前提だと私は思い、腹を決めました。それに、フランスの良さはバカンスの長さ、そして、長さと関係しますが、心のゆとりだと思うのです。ですので、「フランスを読む」は夏休みがあったっていいじゃないか、とも思うんですね。

 さて、昨日UPしました動画はフランスの新しいフェミニズムを唱えたヴィルジニー・デパント著「キングコング・セオリー」について。翻訳にあたった相川千尋さんに語っていただいています。ぜひご覧ください。実は今回、相川さんに扉絵になる「サムネイル」を作ってください、と言われまして、初めてサムネイルを作ってみました。

www.youtube.com

 

河野太郎氏のコロンビア大学における講演と質疑応答を聞いて

   昨日、自民党の総裁選の4人の候補者の討論を見ていました。河野太郎氏も候補者の一人でした。河野氏は安倍政権で閣僚になって、昔と異なるイメージになった、はっきり言えばあまり好ましくない印象を受けていました。しかし、この2017年の国連総会の際に立ち寄ったコロンビア大学における学生たちへの講演と質疑応答を見ていると、奥行きのある政治家のように感じられました。確かに、安倍政権の方向性は日米同盟の強化と中国や北朝鮮への圧力あるいは対峙ということにありましたが、河野太郎氏の話を聞いていると、北朝鮮には国際包囲網の強化を訴えているものの、武力による解決を目指していないことは感じられましたし、そのことは対中国に関しても、「中国語を勉強したい」とか、「友好関係を目指す」とも言っています。河野氏は当時、外務大臣だったから、という事情もあるでしょうが、安倍首相よりははるかに、深く戦略を考えているという気がしました。

www.youtube.com

イラク戦争で死んだ人は2003年から(10年前の)2011年の時点で推定46万人

 インターネットで知ったんですが、BBCの2011年の報道によると、2003年に米国のブッシュ大統領が起こしたイラク戦争で亡くなった人々は市民と軍人を合わせて推定46万人を超えたとありました。この統計調査にはワシントン大学ジョンズ・ホプキンス大学などの研究者が多数参加しています。死者数は4600人ではありません。46万人です。

  「倍返し」という言葉がはやりましたが、このイラクの死者の数は倍どころではありません。そもそも、イラクの大統領だったサダム・フセイン9・11同時多発テロには全然関わっていませんでしたし、大量破壊兵器も持っていなかったのです。

 

www.bbc.com

 

 

棄権率の異常な高まりを前に、ついにフランスの市民が始めた候補者一本化 政治の主導権を市民が取り戻す試み <la primaire populaire >

  先ほど書きました通り、「服従しないフランス」、共産党社会党でフランスでは左派政党がそれぞれ大統領候補者を擁立する構えですが、それだと決戦に勝ち残れない~その結果、新自由主義マクロン 対 極右のマリーヌ・ルペンの決戦となって、多くの人がうんざりして棄権する・・・こういう悪しきスパイラルをもうやめにしようではないか、ということで、「la primaire populaire」(民衆の予備選挙)と名付けられた市民運動が今年7月に立ち上がりました。

  ルモンドの記事によると、あるリサーチで、左派支持者の90%が左派政党からの統一候補を望んでいるという話です。当然でしょう、でないと決戦に勝ち残れませんから。そこで市民の望む候補者を政党から離れて、市民が決めて、それを政党に求める、という運動になるでしょう。要するに、いつも政党から「降りてくる」だけの一方通行だった政治のベクトルを、民衆発にチェンジしていこうという試みです。自分が参加して共に作った選挙であれば投票率も改善するのではないか、ということでしょう。

www.lemonde.fr

来年のフランスのW選挙、左派政党は逆風の中  フランスでも野党共闘が必要だ

    先日、私は日本で新しい市民運動を立ち上げようと試みている左翼運動事務局の方から、フランスの左翼について教えて欲しいと言われました。私が話したのは、前回の2017年の選挙で社会党を含めて左派は大敗して、中道のマクロン新党がほとんど一人勝ちしていたわけですが、2022年のW選挙(大統領選と下院議員選)でも、2017年の再来の可能性がある のではないか、ということでした。というのは、左派政党はメランションを中心とした極左政党グループ、共産党社会党と少なくとも3派に分裂して、第一回投票を迎える可能性があることです。下の記事は、社会党員でパリ市長であるアンヌ・イダルゴが大統領予備選に名乗りを上げたというルモンドの記事です。

www.lemonde.fr

  世論調査ではすでにマクロンマリーヌ・ルペンが大統領選の最有力候補として挙げられており、その構図を壊そうと思ったら、左派政党が候補者を一本化しなくてはならないのではないかと私は思います。

  社会党が大統領を生んだ2012年の大統領選はどうだったかと振り返ってみましょう。1回目投票では社会党のオランドが勝ち進み、決戦で右派政党(共和党)のサルコジ現職と戦って勝ち抜きました。この選挙では当初、左派候補は社会党のオランドと左翼党のメランションに分裂し、共産党はメランションと組んでいました。また左派政党の緑の党も独自候補エヴァ・ジョリを擁立していました。その意味では左派政党は第一回投票で足並みがそろっていなかったのです。しかし、オランドは決戦まで勝ち進むことができました。というのも、当時はまだ社会党共和党の二大政党制が崩れていなかったためでした。社会党はそれ自体が大きな勢力でした。さらに決戦になれば当然、左派は一本化して左派候補に投票します。

 ところが2017年のW選挙の際、社会党からマクロン新党に鞍替えしたり、党内左派議員だった人々も党を飛び出したり・・・と社会党に不満を持った議員が流出する結果となりました。社会党はこの時のダメージから今も再興できていないと私は思います。長年社会党員だった私の知人のフランス人も2017年に党員を辞めてしまいました。

 今年の地方選ではかつての二大政党が存在感を示し、つまり、社会党共和党が勝ちました。それでも来年の大統領選はそうなるとは限りません。地方選は中間選挙みたいに与党への批判票とも受け取れますし、大統領選ではその逆になる可能性があるのです。米国ではその傾向が強いです。左派政党にとってはいかに決戦まで勝ち進むかが最大の課題です。2017年の大統領選で大統領になる可能性もあったメランション候補ですが、今回は新鮮味が乏しくなって、サプライズに欠ける印象を受けます。しかも、前回の選挙で社会党との連携を彼が拒んだことが、今回も左派勢力の1本化を困難にする原因となっており、今回の選挙にも暗い影を与えているように思います。

  過去との最大の違いは極右政党の国民連合が大統領選で第二位につけるまでに勢力を増し、二大政党制を切り崩してしまったように見えることです。その意味で、来年の選挙は2017年を例外的な年に戻して、二大政党制に戻るか、それとも極右政党が確かな勢力となって、この傾向が不可逆となるかがわかる選挙となるのではないかと思います。

  環境政党で左派に位置する緑の党は小勢力ですから、大統領選挙に候補者を立てて討論会などの場で政策を訴えることで認知度を高め、地方選挙などにい役立てたいという思いがあります。ですから、小政党でも独自候補を擁立して選挙戦に臨む、ということは確かに理にかなっています。しかし、4月になって、第一回目の投票が近づいてきた段階で、世論調査の結果も出て、泡沫候補と決戦に残れそうな候補が明瞭になってきます。その時になって、候補者調整を行うという手はあります。私が思うに、そのためにも今から、日本の市民連合のような野党共闘を促す組織が立ち上がって、第一回投票で左派候補を決戦まで勝ち進められるように調整を政党側に促す試みを行う必要があると思っています。

 

 ※そんな風に思っていたら、次のような記事が目に飛び込んできました。これはフランス版野党共闘かもしれません。また、改めて書きたいと思います。

www.lemonde.fr