「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

映画『タクシー運転手』

 この韓国映画は1200万人が韓国で2017年に見た興行一位の大ヒット映画でした。前年は朴槿恵大統領の責任を問うろうそくデモが盛り上がっていきましたが、そうした時代の精神と結びついているように思います。この映画のもとになった1980年5月の光州における弾圧については、当時高校生だった僕は教育実習で母校にやってきた世界史の教員志望の大学生から聞きました。世界史と言えばナポレオンとか、シーザーとか、アレキサンダー大王みたいな人物の偉業のオンパレードの中でしたが、その学生先生は、当時隣国で起きていた事件についておしえてくれました。当時韓国は未だ軍事独裁政権でしたが、この民主化運動への弾圧は最も残虐なものでした。僕たち高校生は、その教育実習の先生の授業を教室をはしごして追いかけて聞いていました。他人のクラスにまで越境して授業に出たのもこれが初めてでした。この映画の最後のタクシー運転手たちの連帯と闘いは、どこまでが史実かわかりませんが、そこに描かれた精神は日本に不足しているものでしょう。

 

www.youtube.com

ネット対談を見た  【宮台真司】"他人を見捨てる"「日本社会」なぜ助け合わないのか?

 波頭氏の冒頭の「植民地経済」というのは現代日本のキーワードですね。過去は大陸や台湾を植民地化していたが、今は日本を植民地にしている。誰が?それは多国籍企業を核とした政財界でしょう。

www.youtube.com

二百年ぶりの歴史学の革新

 歴史学を学ぶ1つのきっかけは、4年前に日仏会館で聞いたイヴァン・ジャブロンカ教授の講演で、現在は200年に一度というくらい歴史学の刷新が試みられている時期であるという話でした。その話はまさに衝撃的に面白かったのです。つまり、歴史学は単なるデータの集積ではなく、文学やジャーナリズムと重なる領域があり、そこを「私」という意識を使うことで、深くしていくことができる。それによって、退屈で無難な「科学」に堕してしまった歴史学に生命を吹き込むことができる、というマニフェストでした。そうした革新の仕掛け人たちを目の前に見た経験で目を啓かれた思いです。

www.nikkanberita.com

キャロル・フィンク著『マルク・ブロック』

 この本は私の先生が翻訳されており、さっそく翻訳で取り寄せることにしました。興味深い本です。『封建社会』など中世フランスを研究したアナール学派創始者のひとりで、レジスタンスで倒れた著名な歴史学者です。

 

エンツォ・トラヴェルソ著『歴史記述における<私> 一人称の過去』

 大学院の論文執筆のために読む一冊。今日届いたばかり。歴史学は、今最も面白い。今さらではあるが、このために生まれてきたような気がしている。

 

 

小倉孝誠著『歴史をどう語るか 近現代フランス、文学と歴史の対話』

 世界は狭いもので、大学院の歴史学の教授に薦められた一冊がこの書。慶應義塾大学教授、小倉孝誠教授のもので、小倉氏にはYoutube「フランスを読む」に2回登壇いただいたことがありました。その際のテーマとも通じる内容です。今回、さっそく取り寄せしました。歴史と文学、歴史とジャーナリズム、ジャーナリズムと文学の間の交差する世界ですね。