「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

高齢化社会に向かうフランス 退職年齢は何歳か

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ミシェル・ドゥロネー著「ベビーブーマー世代の数奇な運命」

 ルモンドのデジタル版の購読で、紙版にない良さは過去の記事も読めるということ。まず私の目を引いたのは、この見出しです。

« Le vieillissement et la mort en série des baby-boomeurs vont poser des questions vertigineuses »

  

ベビーブーマー世代の老いと死はめまいがするような問いを投げかけるだろう」

 

  2020年1月にUPされたものです。医師で2012年の社会党フランソワ・オランド大統領のもとで高齢化問題を担当した元閣僚のミシェル・ドゥロネー(Michèle Delaunay)のインタビュー記事です。彼女は現在73歳です。彼女には「 Le Fabuleux Destin des baby-boomers(ベビーブーマー世代の数奇な運命)」という著書があります。インタビューで彼女はベビーブーマー世代が過去の高齢者に対する常識に革命を起こすことを期待しています。

  ミシェル・ドゥロネーによると、フランスの「ベビーブーマー」とは1946年から1973年までに生まれた男女(いつ終わるかは論者で多少見解の相違もあるようです)。この時代は年間80万人から90万人が生まれていた時代で、全部合わせるとフランスの人口の約3分の1,およそ2000万人を占めるそうです。この後の時代は少子化が進んで行ったのです。

  高齢者にはできない類のきつい仕事があることを考慮に入れた上で、それでも今、高齢化しても健康な人が増えており、昔と比べると約20年以上は元気に活動できると彼女は訴えています。現在、フランスで年金の支給が始まるのが基本的に62歳から。会社などでもっと働きたい人にとってはこの制度は本当に幸せなのか、と彼女は問いかけています。平均寿命が長くなり、比較的健康な人が多いのであれば、退職年齢を固定的に見るのはどうか、と彼女は言うのです。個々の企業会計とは別に、社会全体で高齢者福祉のコストを考えた場合、退職年齢が62歳であることはその後、30年近い歳月の生活費を現役世代が負担することになります。ですから、この人口構成で連峰をなしているベビーブーマーが高齢化した場合にどうするかで、フランス社会も財政も大きな違いが出ることになります。高齢者の福祉を今のまま延長していくと、高齢者用の施設や職員が大量に必要になるとしています。

  フランスの高齢化がどの程度か具体的な数値的把握は私にはできていませんが、ミシェル・ドゥロネーの発言はフランスばかりでなく、日本の状況と響き合います。

  私個人の場合は年金の積み立てを開始したのが遅かったこともあり、今のままで行けば受給年齢になった時に受け取れる額は4万円台ですから、生きていて健康が許す限りは退職年齢を考えることもなく、働き続けることを願っていますし、そうせざるを得ない状況です。しかし、日本の高齢化社会についての記事で最近、印象深かった記事は労働者が普通のスキルしか持っていなければ、いずれ多くの仕事がロボットに取って変わられるというものです。ですから老いても働くと言っても働き口すら見つけるのがますます容易ではなくなる、という暗い見通しでした。

  この問題を考える上で大切なポイントは、年老いても続けたい仕事を持っている人の場合と、仕事がきつくて老いてまでやりたくない仕事に携わってきた人では大きな違いがあることだと思います。体力的にも精神的にもきつい仕事を老いてまでやりたくないでしょう。たとえば丸一日屋外で立ちっぱなしのような仕事は、特に冬場や夏場はきついですし、心身共に消耗します。ですから、もし財政がひっ迫してくるなら、年老いても働く意思と技術のある人はできる限り長く働いて、その収入を働けない高齢者、あるいはもう働きたくない高齢者に回していくような形で、若い世代への負担をなるだけ増やさないようにしつつ、社会の中で助け合う必要があるのではないでしょうか。高齢化しても続けたい仕事をしている人というのは恵まれた人だからです。