「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

アドビのソフトが持つ潜在力

  グーグル(Google)がインターネットや映像メディアに革命を起こしたとすると、アドビ(Adobe)もまた映像のクリエイターたちに大きな影響を与えています。

 私は今年1月、映像編集ソフトをアドビのプレミアプロ(Premiere Pro)に替えましたが使用契約を結ぶ際に大きな刺激を受けました。アドビはプレミアプロという単体だと月間2000円台くらいですが、金額を増してコンプリートというソフト一式を使用する契約にすると、編集ソフトだけでなく、写真やテロップを作ったり修正したりできるPhotoshopや、映像に効果を施すAfterEffect、イラストを描くIllustrator、さらに本の編集ができる In Designまでセットになっていて(ほかにもたくさんソフトが組みになっています)1月に私が契約を結んだときは割引で年間一括払いで52,536円でした。Final Cut ProやEdiusというソフトだと、買い取り方式なので一度お金を払って買ってしまえば月々徴収されることはありませんから、本当はその方がよいのです。しかし、アドビにしてみると、この方式は毎月手堅く収入を得ることができて安定した経営ができます。

https://www.adobe.com/about-adobe/leaders/shantanu-narayen.html

  アドビのCEOはインド系のシャンタル・ナライェン(Shantal Narayen)で、インド系は副大統領のカマラ・ハリスにも象徴されるように米国で存在感を増してきています。ITはインド系の得意とするところです。アドビの契約で私が一番印象深かったのはコンプリートという一式で契約したら、In Designという本や雑誌の編集ソフトまでセットになっていたことです。映像編集をする人に本の編集ソフトはどのような意味があるのか、と考えました。PhotoshopIllustratorならまだ映像に使用するテロップの制作やら、インサートする写真や画像の調整という意味で、映像編集との連動があるのです。でもIn Designはまったくもって活字編集のためのソフトです。これが映像編集ソフトと一式になっているのはなぜかわかりません。しかし、アドビの描くメディアの未来像、クリエイターの未来像には映像と活字の境はないのかもしれません。あるいはあったとしても、しばしば越境可能なものとなっているのではないか、と考えてみました。

  たとえばある人のインタビュー映像を編集してYouTubeにUPした場合、その言葉は音声を活字化するソフトで一瞬にテキスト化することができます。それらを編集すればデジタル書籍に直結します。政治家の弁論集とか、作家の講演記録集などはこのように映像編集の延長線上でできる時代です。今、出版不況で本を出版するのは大きなリスクですし、出版元は在庫を抱えたくないに違いありません。しかし、電子書籍ならそういうリスクもなくなりますし、100人くらいの読者向けでも「出版」することが簡単にできるようになるでしょう。また、それらの電子書籍は学習会の一環として、映像のドキュメンタリーとセットで売ることも可能です。紙の本を作っている出版社が数十万単位で売れるメジャーな作家の企画に絞り込んでいるのだとしたら、逆にこれらの電子書籍は100部から1000部くらいの単位で出版出来るのです。

 出版のプロではない人々が今後多数参入してくるのは間違いありません。このことはドキュメンタリー映画界に既存の映像作家の作品に飽き足らず、弁護士が「日本と原発」を監督したように、デジタル技術を追い風にした新しいプレイヤーの参入をきっかけにコンテンツに変化の波をもたらす可能性もあると思います。