「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

フランソワーズ・アルディの「友情」の味わい

 前に書きましたフランスの国立機関inaが公開している映像の中に、フランソワーズ・アルディの「友情」(L'amitié) もあります。この甘い歌はドゥニ・アルカン監督による 2003年のカナダ映画「Les Invasions barbares」のテーマ曲でもあります。この映画は日本では「みなさん、さようなら」というタイトルで上映されました。世界中でヒットを記録し、アカデミー賞セザール賞でも多数の賞を受けています。

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  ガンで余命いくばくもないケベック歴史学の教授が、それまで仲の悪かった息子と理解し合い、息子の仲介で各地から集まってきた昔の親友たちに囲まれて死んでいく、という物語です。この映画が感動的なのは、親の世代と子供の世代の異なる世界観、家族観、価値観の違いが<父の最期>を契機に、乗り越えられていくところにあります。親の世代はパリ五月革命に影響された世代。セックスも自由奔放で、そのため家族にもひびが入っています。子供世代はそうした親たちの生活スタイルのおかげで、両親が離婚したりした結果、寂しい子供時代を過ごしてきました。映画に出てくる若者の一人は出版関係の仕事をしていますが、孤立感から麻薬中毒になっています。ですから親の世代に対する子供の世代の眼差しはいずれも厳しく、懐疑的です。

 しかし、父の最期をみとるために、呼び集めた仲間たちとの交流を傍目に見た息子世代は、親たちの人生にも理解を深めていくのです。そして、またその逆に、親たちが子供たちと対話をして、自分たちが理解しようとしなかった子供たちの心と向き合います。

 「友情」という言葉には甘い響きがありますが、実際にはそれほど多くないものです。長く生きていると、時代の波にもまれて友情にひびが入ることもありますし、経験や信念の違いから離れていくことが多いと私には思えます。この映画に出てくる五月革命世代はみんなセックスを追い求めた男女ですが、しかし、ドゥニ・アルカン監督によって非常に魅力的に描かれていて、友情が健在で、それがアルディの歌と見事に溶け合っていました。