「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

バイデン大統領の総額2兆ドルのインフラ投資計画 

 3月31日にニューヨークタイムズに掲載されたバイデン大統領の総額2兆ドルに上るインフラ投資計画は興味深いものでした。2兆ドルの規模感ですが、たとえば、トランプ大統領が2021年度予算として組んだ歳入3.9兆ドル、歳出4.9兆ドル(1兆ドルは財政赤字)と比べると、1年の予算の歳入額の約半分に相当します。何に投じるかと言えば

①総計2万マイル(3.2万km) の道路の補修・再建設.

②合計1万の橋の修理、

③2030年までに50万の電気自動車用の充電ステーションの設置

などが柱となっています。米国のインフラが老朽化していることは以前から指摘されていましたから、いよいよニューディール政策並みに政府が事業を創出することになります。道路補修の総計2万マイル=3.2万kmですが、日本の本州の長さが1500kmであることを考えると、その約20倍と莫大な長さ。2兆ドルの予算は企業への課税を今後15年間増せば満たせるとしています。

 インフラ投資とは別に、電気自動車へのテコ入れも計画しています。地球温暖化対策として、石油・ディーゼル自動車からの転換を本気で進める模様で、総額1740億ドルを投じるとしています。電気自動車はまだ全体の1%程度しか普及しておらず、枷になっているのが①充電ステーションの不足②充電時間がない③電気自動車の価格の高さ。ただし今後の開発でコストダウンされていくことは予想されています。バイデン大統領は電気自動車の製造工程も米国内に戻し、雇用を拡大していくことを想定しているようです。前にもブログで書きましたが、約1200万人の製造業従事者に、500万人を新規に上乗せするのがバイデン大統領の計画です。

  これを見た時に、昨年の大統領選で終盤、バイデン候補の応援にオバマ大統領が駆けつけて2人で演説に回っていた姿が思い出されました。かつてオバマ大統領の副大統領だったバイデン大統領ですが、あの時、オバマ大統領が果たせなかった政策に再度挑戦していこうとしていることがうかがえます。二人の大きな課題は格差社会の是正でした。それは中流層のボリュームを増すことにあり、その鍵を握っていたのが製造業従事者の拡大です。1980年代あたりから加速した工場の海外移転とサービス産業への転換は全体として労働者の平均収入の低下に、そして中流層の没落へとつながっていきました。その結果、医療費が払えない家族や学費が賄えない家族を大幅に増やすことになりました。これをどうやって、修正するか。

  この課題は先ほど書きました通り、オバマ政権から引き継がれた課題です。ということはオバマ大統領のホワイトハウスでこれらの課題に取り組んできた経験豊かで、かつ失敗や苦渋も味わったスタッフが多数存在していることを想像させます。彼らがもう一度、今度はバイデン大統領の下に結束し、かつての失敗の教訓を糧に再度取り組めば成功するチャンスは大きくなるのではないかと思います。