「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

再選を目指すと言い始めたバイデン大統領 変化の理由は?

 大統領選の時は「選出されれば1期だけつとめる」と語っていたバイデン大統領がここにきて「再選を目指す」と言葉を変えています。現在、78歳のバイデン大統領。その心の中で何が起きているのでしょうか。私の推測ですが、2024年の選挙戦で再選できる可能性が高いと考えていることにあると思います。それは以下のニューヨークタイムズのインタビュー映像を見るとわかります。

https://www.nytimes.com/video/us/politics/100000007675171/biden-re-election-2024.html?searchResultPosition=10

  この中でバイデン大統領は実際には4年後のことはわからないし、その時「まだ共和党が存続しているかどうかもわからない」と刺激的な発言をしています。しかし、ここで再選の意図を示しておくことで彼が何を考えているのか、と言えば、副大統領のカマラ・ハリスを大統領にしようと本気で考えているのではないかと思います。

  今、バイデン大統領は共和党の抵抗にあっているものの、景気回復のためのインフラ投資や未来への投資を大規模な8年分の予算で組んでいて、これはつまり2期分の予算です。この公共投資に多くの産業、多くの人々が期待し、そこから経済を底上げしつつ、格差を減らし、人種間の収入格差も減らそうとしています。それを考えると、この政策が多くの人の生活を向上させるものであればあるほど、再選の可能性は高まっていきます。

 そして、バイデン大統領の昨年の選挙戦を振り返ると、3月上旬のスーパーチューズデイまでバイデン候補の得票率は全然、ぱっとしていませんでした。ところがその直前に民主党の幹部たちがバイデン候補で一本化すべく、競合するピート・ブタジェット候補やエイミー・クロブシャー候補などを説得して降ろさせました。さらに終盤ではオバマ元大統領が登壇して応援演説に回りました。このバイデン候補を大統領にするプロセスでかなり大きなプッシュをする人が民主党内にいたはずで、その核心はオバマ元大統領ではなかったかと私は推測しています。カマラ・ハリス副大統領は黒人であると同時にアジア系でもあり、女性でもあります。アメリカ史上最初の黒人大統領はオバマでしたが、次期は最初の女性大統領さらにはアジア系大統領を作るプランがあるのではないでしょうか。その最短コースはバイデン大統領が高齢あるいは病で執務ができなくなり、ハリス副大統領に大統領職を委ねることにあります。その決意をバイデン大統領は就任100日以内の今、暗黙の裡に表明したのではないでしょうか。

  金融恐慌の後の1930年代の大不況時に、ニューディール政策を打ち立てて3期に渡ってホワイトハウスに君臨した民主党フランクリン・ルーズベルト(FDR)大統領。何かにつけ、バイデン大統領はFDR大統領と比較され、FDRを強く意識しているという風に私は感じます。ルーズベルト大統領の時代は南北の労働者、白人と黒人の労働者の連携が取れて、民主党の全盛期を作りました。バイデン大統領と彼を背後で支えている民主党の幹部たちは、民主党の再生を極左的な<バーニー・サンダース=オカシオ・コルテス>の路線ではなく、中道にもアピールできる<バイデン=ハリス>の線で図っているのではないかと思います。そして、このラインで、ニューディール時代の復活を狙い、1980年代以後の保守革命によって作り替えられた米国と世界を変えていく・・・そんな風に私は見ています。