「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

オバマの2004年のデビュー演説  「オバマ革命」は今も続いている 

オバマ バラク・オバマが最初に全国デビューした演説として知られるのが以下の2004年7月27日のボストンでの民主党大会での演説です。この時はまだオバマ知名度はさしてなかったはずです。2004年と言えばジョージ・W・ブッシュJr大統領の時代。現職が再選をめぐって民主党のケリー候補と闘った年でもありました。この演説(CNN)でもオバマはケリーを讃えていますが、この時、すでに未来の大統領選に向けて歩き出していたことがうかがえます。

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 自分の出自とアメリカの持つ価値を熱く語った後に、演説の最後に、オバマは米国は共和党の国でも、民主党の国でもない、1つの合衆国なのだ、黒人の国でもない、白人の国でもない、みんなの国なのだ、という風に繰り返し統合を聴衆に畳みかけるように語りかけます。当時は2000年のブッシュVSゴアの大統領選の紛糾も手伝って、米国は深刻な分裂に直面していました。この時のオバマが語った統合は、今回、オバマの副大統領を二期務めて大統領に自らなったバイデン大統領のモットーでもあります。

 前に紹介しましたが、カリフォルニア大学バークレー校のジェローム・カラベル教授の分析によると、民主党全盛期を作ったのはフランクリン・ルーズベルト(FDR)の時代で、ニューディール政策を柱に全国の労働者が~白人も黒人も~結束して民主党を支えていたということでした。しかし、1960年代の公民権運動の激化により、人種間の緊張が高まった結果、南部の白人労働者が民主党を去って共和党に移っていったとされます。この亀裂以後、共和党の力が増し、のちのレーガン大統領を誕生させ、保守革命へとつながっていったということです。ですから、人種間の統合を説くことはオバマ大統領にとっては米国の利益でもありますが、民主党の利益でもあります。労働者が階層や人種で分断されればされるほど民主党は力を失います。

 民主党は2016年の予備選の時、ヒラリー候補の陣営とサンダース候補の陣営で分裂していました。この両陣営が分裂している限り、トランプ大統領には勝てない、と昨年、民主党内の結束を背後から大きな力で促していた人物がいます。当初はヒラリー候補とさして違いがないと思われていたジョー・バイデンが大統領に就任した今、予想以上に思い切った経済政策を進めています。トランプ大統領は米国を分裂させることによって票を獲得しようとしましたが、オバマやバイデンは統合を呼びかけたことで当選することができました。この違いは大きいと思います。昨年の選挙でバイデンを推して、民主党内の左右の亀裂を埋め、最終的に選挙の勝利に導いた影の人物は誰か。私はそれはオバマ元大統領だったのではないかと想像しています。オバマはある意味で言葉は悪いのですが、院政を敷いているのかもしれません。オバマ大統領の時代は基本的に議会を共和党に支配されており、大統領がやりたい政策を自由にできたわけではありませんでした。また、2008年の選挙の際にオバマは金融界の協力も取り付けなくてはならず、金融改革も道半ばで終わってしまいました。いろんな形でオバマ革命は道半ばで頓挫させられたのです。しかし、大統領職を退いたオバマは今、自由に動き回れる時です。現在、59歳。健康が許せばまだまだ活動できる年齢です。オバマの政治家としての核心が本当に見えるのはこれからの8年間ではないか、と私は見ています。