ニューヨークタイムズのコラムニスト、トマス・フリードマンがイスラエルの政情について、興味深いコラムを書いています。イスラエルの国会はクネセットと呼ばれて議員はわずか120人で一院しかありません。そして、政府を構成するためには過半数すなわち61議席の支持を集めなくてはなりません。ところが、このところ、ネタニヤフ首相の率いる右派のリクード党や極右の政党グループと、左派のグループで50議席台で拮抗していて、どちらも61議席を集められないという事態に直面しています。フリードマンのコラムの小見出しが以下。
<Israel and the U.S. are trying to define anew what it means to be a pluralistic democracy.>
ここで言う「プルーラリスティックデモクラシー」は直訳すると、多元主義の民主主義であり、要するに複数のグループの声を代弁するものです。ですから、今小党に分裂しているのであれば、少数政党から政治家を集めて内閣を構成したらいいのではないか?という声がこのコラムでも紹介されています。
ネタニヤフ首相を支援するウルトラオーソドックスといわれるユダヤ教の超宗教保守勢力から、イスラエルの政治を解き放っていい時だ、という見方をフリードマンは紹介し、超宗教保守勢力へのかなり手厳しい批判をここで行っています。このウルトラ保守の宗教界がイスラエル政府の補助金を受けて特権的な位置を占め、その子弟も偏った教育しか受けていない有様を示し、これではイスラエルの未来はかなり暗いとしています。
以下のリンクは記事の中で、テルアビブ大学のダン・ベン=ダビッド教授(経済学)が率いる研究機関Shoresh Institution for Socioeconomic Research が発表したデータ。この教授はイスラエルで超宗教保守の子弟は今は子供全体の19%(2015年)だけれども、2065年には半数近い49%にも上昇すると推計しています。通念ではアラブ系がどんどん赤ちゃんを産んで増えているように思われがちですが、そうではない。超宗教保守こそがイスラエルで人口を急速に伸ばしている~平均で1家族に子供が7人いるとコラムで教授の引用の形で書かれています~ということのようです。今まで聞かされてきたイメージとは真逆のデータですから、インパクトがありますね。このコラムでその他にもベン=ダビッド教授の引用として書かれていることがすべて真実なら、かなり恐るべき現実です。
彼らの子弟は宗教教育こそ受けるものの、数学や科学、ITや読み書きなどの基礎的な学科をきちんと履修していないと指摘しています。これは宗教保守が、人々を自分たちに依存させるために仕組んでいることだとしています。