「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

コロナ禍で2020年のフランスは財政赤字がGDPの9.2%、公的債務はGDPの115%超。 しかしマクロン大統領は2期目は緊縮財政を目指す

  コロナ禍は各国政府の財政赤字を拡大しています。フランスも直撃されており、欧州連合では1年間の財政赤字GDP国内総生産)の3%以下にするというルールがありますが、去年は9・2%となっています。欧州連合本部もパンデミックという未曽有の事態を考慮して認めてはいますが、マクロン大統領は2期目に向けて、欧州連合本部に再び緊縮財政に戻ると約束しようとしていることがMediapartで取り上げられました。この意味を考えてみたいと思います。

  まずはフランスの国立の統計局が今年3月に出した出来たて熱々の財政統計です。昨年の財政赤字GDPの9.2%、国債などの積み上げられた公的債務はGDPの115%超となりました。公的債務の総額の対GDP比は2019年には97.6と100%未満だったことを考えると、大きく超えており、来年は120%超との見通しもあります。

www.insee.fr

  フランスでは緊急事態宣言のもと、何度も外出禁止令を出していますから、当然経済がダウンして税収が減るのは仕方がありません。むしろ、それより恐ろしいのはMediapartが報じたマクロン大統領が再選されたら二期目には緊縮政策を取ろうとしていることです。報道によると二期目の任期中に財政赤字を3%以内に戻すつもりで、憲法財政赤字適正化を条文として盛り込もうとさえしているらしく、Mediapartはついに「マクロニズム(マクロン主義)が過激化の兆候を示す」と評しました。パンデミックがこの先さらにフランスや世界を襲う可能性も考慮に入れると、財政赤字を急激に元の基準値以内に何が何でも戻そうというのはかなりな無理があります。

 Mediapartは近年のサルコジ=オランド=マクロンの時代に病院のベッド数や医療従事者を削減し続けたことが今回、フランスで医療危機を拡大した人災の側面であるととらえ、財政赤字を3%以内に戻すための公費削減で、この教訓が反故にされるのではないかと危ぶんでいます。

https://www.mediapart.fr/journal/economie/090421/pour-son-second-mandat-macron-promet-l-austerite

 この記事を読んでまず思ったことはマクロン大統領への支持がさらに減るであろうことと、来年の大統領選と国会議員選挙で、マリーヌ・ルペンが率いる国民連合(RN)がますます飛躍する可能性があることです。大統領選で決選投票で再びマリーヌ・ルペンマクロンになった場合は緊縮財政の是非が争点になるでしょうし、財政赤字3%を要求してくる欧州連合からの離脱もテーマとして再浮上してくるでしょう。

 米国ではバイデン大統領が大規模インフラ投資で景気てこ入れを行うとともに、その予算を富裕層と企業への課税強化を財源化する方向で進めています。米国が活性化すればするだけ、マクロン大統領のしょぼさがフランス国民の目にさらされてくるのは間違いありません。2017年の選挙の勝利の夜はナポレオンが蘇ったかのような演出でしたが、今では米国の政治家たちより人間のスケールが1桁小さい印象です。それと同時に、フランスの中道左派=左派=極左が相乗りできる体制を作れていないことも、極右の勝利を手堅いものにする可能性があります。