「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

「ニュースの三角測量」の基本的構図  ~ニュースを10倍楽しむ方法~

  「ニュースの三角測量」という一文を私が初めて書いてある媒体に掲載したのは2013年、今から8年前になります。ニュースを1国の新聞だけでなく、2か国の新聞だけでもなく、もう1つ加えて最低3か国の新聞で読むことのメリットを書いたものでした。「ニュースの三角測量」という言葉は文化人類学川田順造博士による「文化の三角測量」という概念を借用したものですが、3つの異なる文化圏のニュースに接することで、より客観的かつ立体的にニュースが理解できるようになるというものです。 
 
  たとえば日本の新聞とアメリカの新聞の2紙を読んでいる場合、2国間の「磁場」にどうしても縛られてしまいます。磁場とここで書いたのは、たとえば2国間の国力の差が大きくニュースの解釈に影響を与えることを意味します。日米の場合、国際ニュースでは戦後、日本人は基本的にアメリカのジャーナリズムを一方的に受容してきた歴史があります。アメリカの政策が世界のスタンダードであり、アメリカの報道は日本よりも優れているという価値観が反映しています。ですから、日本の国内新聞だけでは世界のニュースは十分に理解できないと思い、批判的精神をもってより世界像を客観的につかむために、アメリカのニュースを読んだとしても、その時、アメリカのニュースを一方的に真実と思って受け入れてしまいがちです。 
 
             日本 < アメリカ 
 
  という力関係が思考を縛ってしまって、アメリカのニュースに対する批判的な視座を持てないことになりがちです。もし、アメリカではなくアラビア語圏の新聞であればよいかと言えば、その場合はその場合で日本とアラビア語圏との力関係がやはり作用しがちです。ロシア語や中国語やフランス語でも、二か国語のメディアに限定すればそうした二国間の磁場に作用される可能性が大きいと思います。そこでもう1か国、異なる文化圏のニュースを読むことで、二国間だけではできなかった客観性を一段階、高めることができるのではないか、と思うのです。 
 
          フランス        アメリカ 
 
 
                 日本 
 
  私の場合はフランス語を加えていますが、中東に関してフランスとアメリカの視点が異なりますから、アメリカ一辺倒の見方を修正するきっかけを得ることができます。フランスにはフランス独自の偏見がもちろんあるため、アメリカの記事を合わせることで欧州中心主義的な視点からも距離を置きやすくなります。もちろん、それでも欧州と米国が共同で政策を進めることもしばしばあるので、3か国で十分というわけでは決してありません。ただ外国語のニュースを2つ持つことができ、その2つが互いに牽制的な視点を持ち合わせていれば、ニュースをもっと面白く、ダイナミックに読むことが可能になると思います。

 今はこんなことを書くと非常識と日本では思われるかもしれませんが、世界にはこれを実践している人がかなりの数に上っていますし(私は4~5か国語でニュースを読んでいる人を身の回りで何人か知っています)、いずれは日本でも報道人にとっての1つのスタンダードになると思います。私がそう考える背景には今世紀に入ってアメリカ一強が崩れ、世界が多極化してきた現実が反映しています。競合メディアやライバルと取材でしのぎを削っている第一線のジャーナリストにとって、複数の他言語のニュースソースを持つことは必ず必要になるでしょう。たとえば米国の取材1つとっても、英語だけでなく、スペイン語ができなければもはや十分な取材ができなくなりつつあります。米国では2045年には白人の比率が50%を割り、ヒスパニック系が25%を占めるとされています。その意味で2045年は米国のマジョリティとマイノリティがチェンジする年として想定されているようです。これから先の20年くらいはいろんな意味で、これまでヘゲモニーを握ってきた勢力のものの見方を補完・修正する形で記事にも新しい視点が加わっていくはずです。