「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

注目のニューヨーク市長選 初の台湾系市長の誕生となるか 

 今年のニューヨーク市長選は注目されています。まだ確実なことは言えないにせよ、21人の候補者の中で世論調査でトップに立っているのが台湾系のアンドリュー・ヤンだからです。もし選出されれば初のアジア系NY市長(任期4年)となります。以下は3月の世論調査です。まだ半数が決めていない、という中ですので6月22日の民主党大会まで展開は読めません。

https://pulseoftheprimary.com/sites/default/files/2021-03/Fontas-CODA-Pulse-of-the-Primary-March-Detailed-Poll-Report-FINAL-FOR-RELEASE-0324.pdf

 ニューヨークタイムズでは前にコラムニストのトマス・フリードマンが20年ほどするとマジョリティが白人から、ヒスパニック系やアジア系が黒人や人種混交の人々とともに台頭し、数字的に逆転する、と書いていましたが、実際に政治力のパワーバランスが替わり、多様化しつつあるようです。下のリンクの記事「誰がニューヨーク市長になりたがっているのか?」では立候補者が共和党も含めて短く紹介されていて、ヤンの記事よりもむしろ私には興味深く読めました。黒人候補者や女性候補者など多様な人々が立候補していることが感じられます。警察改革を唱える人もいればホームレス対策を訴える人もいます。また、現職市長のアドバイザーをつとめたり、行政経験の豊かな候補者もいます。ともかく、今の最大のテーマは経済的に危機にあるニューヨーク市の復興ということになるでしょう。

 その中で、台湾系のアンドリュー・ヤンが頭一つリードしているのは昨年の民主党大統領予備選に立候補し、顔と名前の認知度がUPしていたということがあります。ニューヨークタイムズではヤンには政治経験がないことや実業家としての手腕もよく見えない、ということで攻撃を浴びせる人もまた多いようです。一方、支持者はむしろ、政治経験がないことが魅力なのだと反論しているようです。

 ヤンはインターネットで経歴を調べてみると、台湾から移住したエリートの学歴を持つ両親を持ち、アンドリュー・ヤン自身もエリートコースを進んで弁護士の資格を持っています。そしてベンチャービジネスに関係したとされます。ただ、詳しいことは私にはまだわかりません。

www.nytimes.com

  今、アジア系市民は新型コロナウイルスが中国の武漢発だったということで、暴力の対象になっています。そんな中で「アジア系」意識を持つ比較的若手あるいは中堅世代が台頭して政治の1つの力となりつつある、とニューヨークタイムズは先日報じていました。アメリカ人の多くにとっては中国系か、台湾系か、韓国系か、日系か、ということはぱっと見ではよくわからないでしょう。しかも文化的にそれぞれ根本的に何がどう違うのか、ということも一般的にはあまり認知されていないという風に思われます。しかし、実際にはニューヨークタイムズに以前書かれていたように、アジア系はヒスパニック系よりも政治的な結束は遅く、むしろ、分断されてあまり自分たちの要求を声高に掲げるということはなかったと言ってよいようです。これは彼らの出身地であるアジアでも分断されていることの反映でもあるでしょう。しかし、今、多発するアジア系への暴力をきっかけに変わる可能性が記されていたのが興味深く思われました。アンドリュー・ヤンの市長選はタイミング的に先駆と言ってもよい出来事になるかと思います。ただ、もしヤンが選出されても政治の実践がイマイチだったとしたらむしろマイナスにもなるのですから、本当に彼に政治の実力があるのかどうか、アジア系の人々はその見極めは慎重にする必要もあると思います。これはカマラ・ハリスが「最初の女性の副大統領になっても、最後にならないようにしたい」と言っていたことと重なります。