「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

トランプ前大統領の余韻 共和党が新しい投票法で有権者が投票しづらい仕組みを手がける

  昨年の大統領選でトランプ大統領(当時)は選挙に不正があったとして、なかなか負けを認めようとしませんでした。そして、今、米共和党がその意を汲んで、民主党に有利に働いた投票の仕組みを変えようとしています。日本人にはちょっとわかりづらい事情ですが、記事をたどっていくと、米国の広大な国土が関係しています。日本だと比較的住まいの近くの小学校や中学校に選挙の投票所が設置され、それほど投票するのは大変ではありません。しかし、国土の広い米国ではなかなか割り当てられた投票所に当日行くのが難しい人々がたくさんいます。しかも、新型コロナウイルスの感染もあり、なるだけ投票所に人が集まらない方がよいこともあって、昨年の選挙ではdrop box(投票箱)なるものが各地に多数設置されて、できるだけ住まいの近くで投票できるようになりました。もちろん、投票所まで遠い人は郵便で送るという手段もあるのですが、実は郵便局もリストラされた結果、郵便物が届くまでの日数が長引いているそうです。

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   ロイターの上の記事は昨年8月の民主党予備選の頃に掲載されたものです。すでにこの頃からトランプ大統領共和党はドロップボックスに非常な危機感を募らせていたことがわかります。この記事で驚いたのは米国の郵便システムで民主党予備選の投票を投函したら1週間もかかって、結局投票日に間に合わず無効にされたとあります。ですから、郵便箱に大統領選や国会議員選挙の投票を入れて送っても、いつ届くかはっきりしない不安があるのです。むしろ、選挙用のドロップボックスに投票する方が確実に届けられるわけです。ですから、共和党はできる限りドロップボックスの設置数を制限して有権者数が何であれ、州の郡ごとに1つのみみたいな事例もあるようです。

   民主党の勝利が共和党議員たちを刺激して、この春、南部のジョージア州でドロップボックスを制限したり、割り当てられた投票所で投票しない有権者には身元確認を厳格に求めたり、投票所の長蛇の列に飲み物などを配ったりすることを禁じたり、役人たちが投票所の運営に介入したりできるような州法を大急ぎで可決させました。これが米国で最初の法制化のようでCNNは熱心に報じています。

edition.cnn.com

   ジョージア州共和党議員たちが大急ぎで投票法を制定した背景には先述の通り、トランプ前大統領の訴えがありました。ジョージア州での敗北を根に持っているのです。接戦の末、僅差で投票人16人をバイデン候補に持っていかれたのです。12月3日には個人弁護士のルドルフ・ジュリアーニジョージア入りして、民主党の選挙不正があったと訴えました。ジュリアーニは元ニューヨーク市長(共和党)で、トランプ前大統領の選挙不正を訴える訴訟を担当しています。トランプ前大統領のジョージア州の選挙への執念が共和党議員たちの尻を叩いたと言って過言ではないようです。下の2月のニューヨークタイムズの記事では何が何でもジョージア州の勝利を奪い取りたい前大統領の執念が感じられます。

www.nytimes.com

  米国と日本を突き合わせてみると、日米ともに右派政権はなるだけ投票率を下げさせようとしていることで共通しているように思われます。