「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

借金王の思い出  個人保証100億円の負債と返済期間8000年

 今日、新型コロナウイルスで事業がストップして、家賃がかさんだりして倒産したり、やりくりに窮したりする人が増えていると聞きます。私も昨年4月に予定していた海外ロケにビザが出なくなって1年になっても未だ解除されないまま今も凍結中です。この先にいかなる生活の保証もありません。昨年夏は女性の自殺が急増したというニュースもありました。

 こうした状況、私にはデジャビュ感があります。1990年代半ば、池袋の弁護士事務所を取材していると、毎日のように「死にたい」というような人々が押しかけていました。当時はバブル経済の崩壊で、借金が返せなくなった人々がたくさん自殺していました。中には自殺して、保険金で借金を返していた人々すらありました。特に闇金融と当時呼ばれたヤクザの取り立てで安心して眠ることもできなくなった人々がたくさんいて社会問題にもなっていました。当時は「グレーゾーン金利」(※)と言って、高利貸しが半ば大手を振って歩いていたのです。200万円も借金があれば庶民のサラリーでは返済不能になってしまっていました。こうした人々が弁護士事務所に押し寄せ、借金の清算を弁護士に頼んでいたのです。弁護士事務所にたどり着けた人々は幸運な人たちだったと言ってもよいでしょう。私は映像業界に入ったのが1992年で、すでにバブル崩壊から1年たっていて、1997年の山一証券の倒産までどんどん景気は悪化し、多くの人がリストラされていました。

  そんな時、取材で出会ったのが借金王と呼ばれた大塚の不動産会社社長でした。不動産会社の借金に個人保証をつけて100億円近い借金をその人は個人でも抱えて生きていました。返済期間は8000年です。もはや尋常ではない、まさにこれこそが「バブル経済」と呼ばれた異常さの象徴でした。なぜそんなことになるかと言えば、その人の話では融資を受けた都内8銀行の支店長たちは不動産会社が倒産してしまうと、貸し倒れが確定してしまい、銀行の帳簿に記載されて業績が悪いという評価につながって出世の妨げになるからです。そこで8銀行の支店長たちが集まって取り決めて、毎月1万円ずつというような細々とした返済金額に設定すれば不動産会社が倒産することなく維持できるので、返済期間が8000年というようなことになったと言っていました。「私は倒産させてくださいと頼んだけど、彼らが許してくれなかったんだよ!」と社長は私に語りました。金融機関がこうした実態隠しをしていたために、日本の不良債権額の正確な規模を政府の金融・経済当局者もつかめず、当初3年したら復活できると言われていた日本経済は「失われた10年」あるいは「失われた20年」と拡大し、毎年3万人超の自殺者を放置してしまったのです。

  この人はそれだけの負債を抱えながら、いつもスマイルを絶やさず、借金から逃げない姿勢を貫いていたことで次第に尊敬されるようになり、借金200万円とか300万円といった人々が元気をもらおうとこの人に会いたいと集まってくるようになり、講演会などを開くようになったのです。借金王は「先生、先生」と彼ら中小企業主たちから慕われていました。講演では100人近い聴衆を前に、まず借金王は「わっはっはっはっ~」と大きな声をあげて笑って見せ、「さあ、皆さんも一緒に」と全員で大きな声で笑っていました。

 

グレーゾーン金利(グレーゾーンきんり)とは、日本において2010年平成22年)6月18日施行の貸金業法及び出資法改正前に存在した利息制限法に定める上限金利は超えるものの出資法に定める上限金利には満たない金利のこと。(ウィキペディア

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グレーゾーン金利