「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

カリフォルニア州知事 ~2045年の石油生産ゼロを目標にする~

  米国の過去10数年の歩みには本当に驚かざるを得ません。カリフォルニア州知事が2045年には州では石油生産をゼロにする方針だと宣言したからです。さらに近年開発されたシェールガスシェールオイルの掘削も2024年までに禁止するとしています。ニューヨークタイムズ(↓)で報じられています。知事は民主党の政治家ギャビン・ニューソムです。このニュースは昨日のDNI(国家情報長官)による異常気象を米国の外交政策の主要課題にするという宣言に続いて飛び込んできました。バイデン大統領はすでに電気自動車の充電施設を全米に50万か所設置するとしています。

www.nytimes.com

  驚いたのは2008年に石油価格が高騰し、とうとうピーク(原油1バレル当たり169ドル)に達し、当時は世界の石油は枯渇寸前だとされていたことです。「ピークオイル」という本まで出ていました。以下は原油価格のグラフです。2008年まで高騰しています。ところがオバマ政権が2009年に発足した頃にはシェールガスシェールオイルというミルフィール状の頁岩層に蓄えられた石油やガスを取り出すフラッキングという方法が実用化され、これによって莫大な埋蔵量があることがわかり、米国はサウジアラビアを抜いて世界最大の石油資源を保有するとされて「サウジアメリカ」と言われるまでに至ります。シェールガスシェールオイルの掘削が始まるとともに値段が下がり、さらにサウジアラビアも米国に対抗するために生産量を増やしました。なぜなら原油価格が一定以下に下がればシェールオイルの掘削は生産価格の方が高くなって掘削不可能になるからです。今年3月はバレル59ドルですから、いかに石油価格が世界の需給の変動を受けやすいかがわかります。シェールオイルの掘削会社は値段を見ながら稼働したり、稼働をストップしたりを繰り返してきました。

www.macrotrends.net

 それから10年ほどした今、石油を撤廃する方向に米国は舵を取り始めました。DNIが米国の石油の埋蔵量を捨ててまで(捨てるとは言ってはいないものの)、なぜ異常気象対策に本気を見せているかといえば、異常気象が2030年代に世界で猛威を振るい、莫大な難民が生まれると予測したからです。

 ニューヨークタイムズの先ほどの記事が面白いのは、もともと選挙戦で脱石油、脱フラッキングシェールガスシェールオイルの掘削をやめること)を掲げて当選した知事は、長い間、脱石油の実施にはぐずぐずしていたことを書いていることです。一方で、このくっきりした発言が出たのは、リコールの要求が現実化した時のことで、再選挙の際に民主党環境保護を求める人々の票が欲しかったからだと書いています。さらにこのリコールの要求の背後には脱石油を掲げる知事を排除しようとする石油業界の動きがあるとしています。実際、シェールガスシェールオイルの開発までに莫大な投資をしてきた石油産業から見ると、バイデン大統領のグリーン革命の続編は脅威に映っていることは間違いありません。

  米国の異常気象問題の外交を担っているのはジョン・ケリーです。彼は外国の政治家たちから<トランプ大統領が一方的に地球温暖化対策から撤退した歴史があるが、バイデン大統領の方針も次の大統領が覆す可能性はないのですか?>と尋ねられたそうです。それに対して<産業界がグリーン革命で利益が出る構造になるから心配はない>と答えたそうです。つまり、石油産業界はグリーン革命に投資をすれば儲けが出ると言っているのです。