「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

ヌーヴェル・デュ・ジャポンを知っていますか? 日本の短編小説を仏語で世界に発信

   ヌーヴェル・デュ・ジャポン(Nouvelles du Japon) って聞いたことがありますか?発足から1年の新しいウェブ媒体で、日本の短編小説を毎月、フランス語に翻訳して世界に発信しています。翻訳される作家も太宰治中井英夫阿部和重ドリアン助川千木良悠子小山田浩子など多様です。翻訳者が自発的に訳してみたいものを重視していると言います。短編小説はフランスでは今日、あまり主流ではなく、本もあまり出版されることがありません。日本とは大きな違いです。そこで日本在住のフランス人の翻訳家のダルトア・ミリアンさんは翻訳家のボランティアを集めて、まずは試しにとばかりに、ウェブサイトで面白い日本の短編小説を翻訳して発信し始めたのです。この媒体、欧米を中心に読まれています。今回、私が携わっておりますYouTubeチャンネル「フランスを読む」で創設者のダルトアさんにインタビューさせていただきました。 今、意気軒高、とても活発に活動されている方です。

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      ダルトアさんは来日後、NHKの国際放送で働いていた時に乙一の小説を自発的にフランス語に訳してフランス著作権事務所に出版社を探して欲しいと持ち込んでみたところ、1年後に見つかって翻訳家デビューしたと聞きます。その後、翻訳家として頭角を現し、ドリアン助川の「あん」の仏訳は読者大賞を受賞、現在ではドリアン助川の本の仏訳は5冊目になるそうです。さらに小川糸の小説「食堂かたつむり」の仏訳もヒットし、女性を中心に読まれていて、小川糸の小説も現在5冊が翻訳されたそうです。小川糸の小説は読むと安らかな気持ちになれるということで、フランスではクリスマスなどのプレゼントにされることが多いのだそうです。私もダルトアさんの翻訳バージョンを手にしたことがありますが、本当に平易なフランス語に訳されていてすごく読みやすいのですね。

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フランスで読者大賞に輝いたドリアン助川作「あん」の仏訳 ダルトア・ミリアンさんが翻訳を手がけています

     ヌーヴェル・デュ・ジャポンはすべてがフランス語のサイトですが、面白いのはそれぞれの短編が何分で読めるか、めどとなる数字が全部記されていることです。10分とか、7分とか、15分とか。これならフランス人も電車の中でスマートフォンでも読めるという気になるでしょう。日本人は俳句や川柳など短い文学を得意としますが、短編小説も例外ではありません。そして、現代世界が忙しくなっている中、短編小説はもっと読まれるようになるだろうとダルトアさんは考えています。ですから、ことさら「日本の短編」ということはないそうですが、日本在住も長いし、翻訳家でもあるので日本の短編小説を発信していくというのです。

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小川糸作「食堂かたつむり」のフランス語訳もダルトアさんの翻訳

 ※ヌーヴェル・デュ・ジャポンのリンク

nouvellesdujapon.com