「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

バイデンに受け継がれたオバマ演説術

 このYouTube番組の特集はオバマの演説で、大統領になったオバマの演説のどこが違ったのかを分析しています。とくに初めて民主党大会で全国デビューをした2004年のボストンでの演説の映像が取り上げられています。シカゴをのぞくとほとんど知られていない無名政治家だったオバマ民主党員の心に焼け付けたのです。聴衆を魅了したのは移民の子供という共通の物語の上に「アメリカには共和党アメリカも民主党アメリカもない、アメリカは1つだ」「白人のアメリカも黒人のアメリカもない、アメリカは1つだ」と畳みかけるように語りかけたことでした。民主党のケリー候補を大統領候補に推す集会だったのですが、応援にやってきたオバマの演説が聴衆の心を完全に魅了してしまったとコメンテーターは話しています。トランプ大統領の人種分断演説と対比的に、オバマの演説は副大統領だったバイデン候補にも昨年の大統領選で受け継がれて、見事バイデンを勝利に導きました。この番組の分析は見事です。

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  特に昨年5月末にミネアポリスで黒人ジョージ・フロイド氏が警官に地面に押さえつけられて殺され、その映像が全米に流れ、一気に人種暴動の広がりかけました。しかし、人種間の葛藤が強まると民主党支持者は白人と黒人に分断され、支持が弱まる傾向があります。その時、バイデン候補は人種間の怒りに身を委ねてはいけないと語りかけ、人種間の統合、1つのアメリカを懸命に訴えかけました。フロイド氏の親族も暴動の現場に出てきて「何をやっているんだ?こんなことしても兄は生き返らない!」と民衆に冷静さを求めました。こうした努力で人種間の軋轢がいったん終息し、やがて政治での闘いへと転化して行ったのは、まさに先述のオバマの「アメリカは1つ」という演説術が効果を上げたと思います。あの時、一歩間違えると、トランプ大統領の術中にはまってしまった可能性もありました。もしトランプ大統領が再選されていたら、ミネアポリスの元警察官の裁判結果も違っていたかもしれません。

   昨年5月末、ミネアポリスでの黒人殺害の直後にバイデン候補行った演説。オバマに比べると穏やかですが、アメリカの歴史を語り、アメリカは1つだと語って、必ずレイシストの責任を問うとしています。

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