「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

グローバル時代の波が映像業界にも

  グローバル化の波はついに日本のメディアにも襲いかかろうとしています。それでは20年前に金融に、10年前に電機を襲ったようなこれまた日本のメディア業界への激震となるのでしょうか?金融と電機との比較において見ると、まず日本語という防壁に守られ日本国内市場に限定されて日本の業界の常識で行われてきたルールが崩されていく可能性はあるでしょう。たとえば電機産業の場合を例に取ると、何が起きたかと言えば、業界の最大手の製品メーカー群は世界市場から追い払われてシェアを落としましたが、下請けメーカー群は納入先を第一線で活躍する外国メーカーに移して、したたかに生き残っているのが現実です。半導体の韓国や台湾のメーカーは日本の国内メーカーよりも金払いが良くて、部品の納入分に対してすぐにお金を払ってくれたわけです。

  日本国内のメディア環境を見ると、2008年のリーマンショック以後、番組の制作予算が大幅に減るだけでなく、調査報道番組は皆無と言っていいほどなくなり、報道に賭けてきた私の知り合いの制作プロダクションは昨年ついに倒産してしまいました。また安倍政権下で放送局でもフリーでも気骨のある記者やジャーナリストが仕事を干されて新聞界に転じたり、転職を余儀なくされたりしています。日本ではまだインターネットで独立して収入を得て報道を展開できる企業は限られており、将来はもっと広がる可能性はありますが、軌道に乗るまであと10年くらいかかるかもしれません。一方で、米国の世界最大手の某企業のインターネット番組などが日本のディレクターや制作会社にすでに番組作りを打診してきています。私のところにも打診が来ました。報酬的には日本のかつてのTV番組制作と同等くらい。インターネットと言えば予算が桁1つ小さい、というのがイメージでしたが、桁が同じになっています。もし、これでTVと同様に番組が作れて、日本の報道統制のようなタブーがなければ(実は外資でもやっぱりあると見ていますが)日本のクリエーターが大きくシフトしていく可能性があります。今、コロナ禍で軒並み企業が業績を落とす中、その米国企業は売り上げを倍増する勢いです。 

 私は何も日本のメディアが落ちればよいとは思っていません。ただ、血沸き肉躍るような、自分が情熱をこめて制作できるものづくりをしたいものです。かつてはそういう緊張感がありましたし、そういう番組づくりができました。今、フランス語でも英語でもドイツ語でもスペイン語でも外国のTV番組をインターネットで外国語で見ていますが(海賊版ではなくて、世界にそのまま公開しているわけです)、面白いですよ。程度の差はありますが問題の核心に迫っている報道をしています。外国人の私でも登録してしまう内容なんです。そして、ここにきて、ニューヨークタイムズやルモンドなどのかつての紙媒体のインターネット版が普及し始め、それらのメディアはインターネットで映像やポッドキャストも流すようになりました。活字と映像を複合しながら、より立体的な報道を創り出そうとしています。今、グローバル化の波はそこまで打ち寄せています。ですから電機や金融の例に陥らず、この辺で「俺たちこんなにすごい」の自画自賛を越えて、日本のメディア産業も世界を直視して欲しいと思います。私の友人のフランス人たちはすでにTVという箱を買う習慣がとっくになく、ニュース番組もパソコンで見ています。