「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

5月1日、パリのデモ 再び機動隊と衝突

 今年の5月1日のパリのメーデーは激しい機動隊との衝突が起き、ジレジョーヌ(黄色いベスト)の再来とも報じられています。以下はハフィントンポストの動画でYouTubeにUPしています。

https://www.youtube.com/watch?v=Xl-n6f_gDzU

  もしもっとリアルなバージョンが見たい人はFacebookのBrutという媒体の動画でレミ・ビシーヌ(Rémy Bisine)というビデオジャーナリストの映像をぜひ見てください。3時間5分に渡る切れ目のない連続動画で、状況を語る彼の言葉が随所に入ります。

https://www.facebook.com/1757782394471400/videos/176107661046488

レミ・ビシーヌは常にこうした現場の最前線に出て、多くの市民に尊敬されているジャーナリストです。2016年の「立ち上がる夜」という市民運動が始まった時も、ペリスコープという実況中継の媒体を使ってインターネットで共和国広場から連続中継を行ったことが起爆剤となって、何万人もの人々が広場にはせ参じるきっかけとなったと言われています。ビシーヌの動画はスマートフォンを使っているらしく、構図が縦の構図になっているのもプロの動画としては新鮮です。縦の構図は横広の構図と違って、全貌が水平線的に一望できない構図のため、どんどん奥に、縦につき進んで行く印象を強めます。それが長時間、語りながら少しずつ見せていくスタイルとマッチしているのでしょう。黄色いベストでは多くのデモ参加者だけでなくジャーナリストもフラシュボールと呼ばれるゴム弾で体や目を傷つけられています。催涙ガス弾も飛び交います。危険な取材現場ですが、それゆえ、動画を見ているとあちこちで「レミ」「レミ・ビシーヌ」「レミ、元気か?」などと声をかけられています。彼らが撮影していることで機動隊もデモ参加者への対処が過剰な暴力の行使になっていないかが検証されることにもなります。

  今、これほどの激突が再燃しているのは、新型コロナウイルスで事業ができなくなって経営が苦しい人々や生活が困窮化する人々が増えていることを示しているのだと思います。この日は労働者のデモの日で、リベラシオン紙ではフランスの北東部に位置する都市リールで左翼の指導的立場の政治家らが集まったものの、2017年の大統領候補で左派の筆頭だった「服従しないフランス」のジャン=リュク・メランションが結束を乱すような言動を行っていることが批判的に書かれていました。緑の党社会党服従しないフランス、共産党らの政党が結束して左派統一戦線を作れなければ2022年の大統領選挙は再び極右VS新自由主義となり、今度はマクロン大統領の人気低下からマリーヌ・ルペン大統領が誕生する可能性が2017年以上に高まっています。

 私はフランスの友人たちには左派統一戦線が今年の夏=7月~8月までに結成できなかったら、左派は来年も厳しくなるだろうと昨年末以来、警告を発しています。というのも共和国前進マクロンと国民連合のルペンは与党と野党の大統領候補の筆頭ということで、日々TVや新聞に登場して、その宣伝効果は計り知れないほど大きいものがあります。左派の候補が存在感を高めるためには早めに政策と顔を売り込まなくてはなりません。すでに4年以上の差がつけられているのです。2017年の大統領選挙で左派が大敗した理由は服従しないフランスの党首、ジャン=リュク・メランションが当時はまだ与党だった社会党の候補者、ブノア・アモンとの選挙協力を拒んだことが原因でした。メランションはもともと社会党出身ですが、社会党の右傾化を憂いて左翼党というのを自ら立ち上げ極左という立場の路線を取りました。日本で極左というと過激な暴力的印象がありますが、フランスでは社会党より左に位置する政党は極左と呼ばれていて、決して過激暴力集団のニュアンスはありません。社会党の大統領候補だったブノア・アモンは大統領選にこれ以上ひどい負け方はないというような得票率6%で惨敗し、彼もまた社会党を寂しく去っていきました。

 今回もジャン=リュク・メランションは服従しないフランスから立候補するかもしれませんが、2017年のことが記憶にある人々の目には、特に社会党服従しないフランスとの統一戦線を望んだ人々には、メランションは悪しき記憶がついて回るのではなかろうかという気がします。前回の選挙からすでに3年も経つのに未だ左派政党は先行きが閉塞しているように見えます。私がフランスの弱体化した小さな左派政党の結束を応援するのは、日本の野党共闘を応援してきたのと同じで、アメリカのように右派と左派が拮抗して選択できる二大政党制の形がなければ小選挙区制のもとで、有権者は選択肢がなくなってしまう、ということにあります。小選挙区制を作った以上は、有権者が真の選択ができる政治状況がなければ民主主義は実現できないと私は思います。フランスの2017年の大統領選挙の際も、白票も広義の棄権に含めると、半数近い有権者が棄権するという事態でした。

 さて、このレミ・ビシーヌの映像を見ていると、ネット新聞をつまみ食い的に書いている自分が恥ずかしくもあり、自分も1日も早く「現場」に行きたいなと思うものです。そのためにも主体的に仕事ができる状況を何が何でも1日も早く再構築しないといけないな、と思います。