「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

日英仏の辞書を読む ビジネスに活かす

 先ほど、翻訳書を出して1周年と書きましたが、翻訳をしてみて最も自分に変化があったのは辞書の引き方が根本的に変わったことでした。それまでも私は頻繁にというか毎日辞書を引く人間でしたが、以後は必要に応じて引くだけじゃなくて、積極的に読むように変わりました。要するに、必要がなくても辞書を開いてランダムに単語の意味を読む、それも上から下まで全部読む、というような読み方です。で、それをノートに書きとっています。

  これをやってみると、単語について、よく使ってきた単語でも意外と知らない意味もあったりして、大きな発見でした。

 たとえばフランス語のterribleには「恐ろしい」とか「恐怖の」あるいは「猛烈な」とか「ひどい」という意味があります。しかし、同時に「すごい」「素晴らしい」「素敵な」という意味もあります。まったく反対の意味を1つの単語が持っています。

 un terrible accident de chemin de fer  =恐ろしい鉄道事故

une voiture terrible =すごい車だ

 こんな風に対照的ですから、文脈で使い分ける必要があります。

 こういうのは1つしか意味をしらなかったら致命的になりかねませんね。要するに翻訳しようと思うと基本的に全部の選択肢を知っていないと最良の日本語に置き換えられるかどうか厳密にはわかりません。そして、フランス語でそれをやると、今度は同じことを英語でも始めることになりました。そして・・・

  私はこの1~2年、プロの翻訳家が講師を務めるフランス語の翻訳ワークショップに通っていますが、そこでは逆に日本語力がむしろ問われています。要するにフランス語の単語を日本語に直す時に日本語の表現力やワーディング力が不足していると、最良の訳には程遠くなってしまいます。翻訳は出力という面で見ると、日本語をどこまで知っているか、ということが重要になってくることも知りました。そこで最終的には~まだ着手こそしていませんが~日本語の辞書も読むことになるんだろうなあ、と感じています。

  こんな風に書くと、村上は結局、映像の仕事を捨てて翻訳業に転じるのだなと思う人もあるでしょうが、それは過去の発想で、今後は語学をやりながらも映像をやるという風になっていくと思います。私の場合、語学をやる動機がニュースの情報を集めることにあったように、映像の仕事において語学力は今後ますます欠かせなくなっていくと思えるんです。もちろん、グーグル翻訳等でかなりAIが処理してくれるでしょうが、最終的にその表現でよいのかどうかを確認するのは人間です。

 今後私にとってはフランス語圏や英語圏の顧客とか取材源、あるいはプロデューサーや投資家と実務を行う時代が来ると思います。日本語圏の人口が減少しているだけでなく、私のやっている分野に関心を持つ人も今のところさして多くありません。しかし、英語圏とフランス語圏を足せば莫大な市場があります。私はそこに賭けていくつもりです。といっても日本の国内市場を軽視する意味ではないのですが、日本の市場は数が少ないだけでなく、ある種の力が働いて支配的な価値観に沿って「in」 と「out」に分断されていて、「out」と判定されると市場にアクセスすること自体が難しくなる構造になっているのでないでしょうか。学歴や思想だけでなく、年齢とか、容姿などもそうです。ですから私の場合、日本の国内市場だけで生きて行くのは難しい時代に入った気がします。売り上げ全体(市場)が減少しているに加えて、市場参入の障壁もますます高まっているわけです。以下のメディアの統計を見ると過去20年の日本の活字やTVなどの既存メディア市場の縮小ぶりは明白です。既存メディアは市場も先細っている上にそこに携わっている人々の間にも分断が起きており、とめどない閉塞感を生んでいると思います。ですから、私の周辺で精神を病んで鬱病にかかる人や仕事が嫌になって転職した人を何人か見ています。狭い業界の中ゆえの同僚に対する憎しみとか敵意、過当な競争というのは精神に極めて有害です。成功している米企業内のエートスとは反対です。グーグルのエリック・シュミットらが書いた「1兆ドルコーチ」を読むといかにシリコンバレーのIT新興企業が人を大切にし、社内の人間関係に配慮してきたかがわかります。もちろん、負の側面は書かれていないのかもしれませんが、ともかく本書を読むと、私たちが思い込んでいる<同僚と激しく競い合う米企業>のイメージとは180度変わってきている傾向は如実に感じられます。それは生産や営業の仕組みが変化している事でもあります。ある意味では昭和時代の日本企業にも似ている気がします。

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