「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

「火星年代記」「華氏451度」の作家レイ・ブラッドベリのインタビュー

  火星に「植民地」を作る、という人間がとうとう現れ、実際に準備をしています。火星というと、SF作家のレイ・ブラッドベリが抒情的に描いた「火星年代記」という本を思い出します。思った以上にその現実化が早く進んでいるように思いました。テスラのイーロン・マスクは「なぜ火星に関心があるのか?地球に課題があるんじゃないのか?」と問われて、科学技術というものは常に前進していないと後退していくものだ、と語っていました。エジプトのピラミッドもひとたび進歩をやめたらどうなるかを象徴している、と。技術というものは維持するだけでも非常に大きなエネルギーを要するものなのだ、と。アメリカ人におけるこのような発想の根っこは先祖が大西洋を恐れをものともせず渡って移住した歴史にあるのでしょう。ある意味で恐ろしくもあります。

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  レイ・ブラッドベリはSF詩人などとよく言われていました。私は10代の学生時代に文庫で出ているものはほとんど全部読みました。もちろん、本が禁じられた近未来の全体主義社会を描いた「華氏451度」も。ブラッドベリはなぜこの小説を書いたのか、と言うと、このインタビューで語っています。本がなければ文明に参加できないし、民主主義の実現も不可能だと語っています。ブラッドベリにとって本はまさに趣味以上のもので、大学に行かなかったブラッドベリは図書館に通って本をたくさん読んで独学で多くのことを学んだと語っています。このことは何度もあちこちのインタビューで繰り返し語っています。図書館で学んだことの利点は、権威主義に毒されることから免れたことだったとも言っています。大学に行けば大学の権力構造があり、その構造の中で言いたいことも言えない、ということはよくあることです。さらに現在は文科省にも研究費を人質に統制されています。

  そんな中にあって、ブラッドベリのように図書館で学んで自分でタイプライターに毎日書いた、というような非常にプリミティブな方法で成功した作家が何人かいたことはアメリカのパワーを示すものでもあると思います。このことは、今日、民主党がリベラルかつエリートの政党になって、大学を出ていなかったり、ランクの低い大学出の人々を馬鹿にしているという印象を多くの人に与え、そうした反発が民主党から共和党に白人たちの投票先を動かし、トランプ大統領を生んだことに象徴されています。レイ・ブラッドベリのような作家は、そうした敷居を乗り越え、多くの人に夢を与えることのできた作家だと思います。

    以下のニューヨークタイムズの記事は、2018年のものですが、いかに米民主党がエリートの鼻持ちならない党に変質してしまったかが冷徹に書かれています。このことは先ほどUPしましたジェローム・カラベル教授(社会学)の「トランプ主義は生き残る」にも書かれています。エリートたちの教養が庶民とは階級差のあるとんでもないものになって、ほとんど階級社会になったかのような現実であり、それが労働者の党の体たらくというわけです。今、大学に行くのはとてつもなく金がかかりますよね。そんな中にあって、一部の富裕なリベラル派エリートたちが文化資本を独占するかのようになっていることが、右翼ポピュリズムを台頭させているのです。なぜこんなことになったのか。このことは理想が高かったにも関わらず、社会主義を標榜したソ連がなぜ沈没したかをもまた思い出させるものです。そして、日本も同じ現実があると私は思っています。左派の政党が大衆の支持を集められないのは、必ず理由があるはずなのです。

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