「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

出版界はどこへ???

 日経でこんな記事が出ています。取次会社クビ、という風に聞こえますね。というか、省けるコストは全て省くということで、出版社が取次店を使わない、という方針。でも、こんな風に中抜きを始めると、作家もまた産地直送に切り替えるかもしれません。もうAdobeは作家が電子書籍を販売できるまでの編集ソフトの技術を打ち出しているのではないですか。出版社が機能しているのは出版社への信頼とか、ブランド力が生きているからですが、最近はヘイト本を出す老舗出版社も増え、いつまでそれが続くかわかったものではありません。アマゾンが世界100カ国以上の言語を駆使して、世界で本の翻訳版や映画化権も含めて、世界中の作家と直接契約する日は明後日に迫っているでしょう。www.nikkei.com

  ところで私は今年、「フランスを読む」というYouTubeチャンネルを作ってフランス書籍の紹介事業を始めていますが、これを始める1年前に、フランス人から「どうして日本では本を紹介するYouTubeチャンネルとかウェブサイトが少ないのですか?特に書店の物はほとんどないですね」と言われたことがあります。そうなんです。フランスでは書店レベルですごいYouTubeチャンネルを発展させているところがあるんですよね。

www.youtube.com

  これです。モラ書店の読書チャンネルで、ものすごいパワフルなんです。映像も見事なら、企画も先端の話題の本をどんどん先取りして紹介しているんですよね。なんで日本にはこんなのがないのかしら?と私はフランス人に聞かれて、こう答えました。

 「日本の書店は本を店に置いて何週間か経って売れなかったら全部返品できるんですよ。だから、必死に売らなくてもいいし、自分で本当に本を選んでいるわけでもないんです。取次会社の配本を受けて、売れなかったら返品できる。こんな楽な商売は世界にないですよ。だから、自分でチャンネルを作って本のPRなんて、あるわけないでしょ?」

  これはま、言い過ぎかな。でも、正直、日本の町の書店に置いてある本で満足できた経験はこの20年くらいはないですね。どんどん新自由主義歴史修正主義の本、怪しい新興宗教の本が増えているでしょう。私に言わせれば屑本が増えている。書店に行きたいという意欲は年々下がる一途です。

 フランスでも書店はネットに押されて大ピンチです。でもフランスに行くとわかりますが、書店は本で勝負しています。漫画や雑誌は売っていないんです。要するに本屋は哲学や人文科学、科学や文学など、かなりクオリティの高い本が天井まで詰め込まれています。いや漫画の質が低いとは思いませんが、本は本でも売る店が違うのです。雑誌、漫画、本で分かれているんですね。日本みたいに雑貨店ではないのです。ですから一歩入ったら日本の町の書店と密度が違います。書店員の本の知識も違いますよ。自分で選んで、売れるまで売るつもりですから。これは本を読む読者の需要や意識の違いでもあると思います。