「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

「地下鉄のザジ」とレーモン・クノー

地下鉄のザジ」と言うと、名匠ルイ・マルの喜劇タッチの映画を思い浮かべる方が多いかと思うのですが、原作小説のレーモン・クノーの世界もとても面白いです。またジャック・カレルマンによる挿絵が抜群に魅力的ですね。日本の翻訳では生田耕作が担当していて、これも素晴らしい味わいです。とにかく、一流の癖のある芸術家たちが勢ぞろいした感じです。レーモン・クノーはコレ―ジュ・ド・パタフィジックという前衛文学の流派に属していて、文体にも実験的なものがあります。この本、生田訳だとこなれすぎていて十分にわかりませんが、原書を読んでみると、かなり変な単語が続出していて、それは庶民あるいは下層階級の言葉に忠実に文字おこしすると、こうなる、というような文章になっています。発音されない音は書かれていません。

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 「地下鉄のザジ」は地方在住の妹が娘を預かってくれと、パリに上京してきたため、ゲイ向けのダンサーである主人公が娘ザジを預かるけれども、お転婆で口の悪いザジがてんやわんやの大騒動を繰り広げていきます。ダンサーの伯父は奥さんのいる身なのですが、謎めいた生活を送っていて、そこに破天荒な娘が現れ、風変わりなりにも安定していたであろう私生活が乱されます。さらに変な大人たちが続出で、ザジに負けていません。これはやっぱり、道化師的な世界で、地上を支配する秩序が束の間であれ、壊されて自由が一瞬顔を見せる、そんな小説です。

 僕はコレ―ジュ・ド・パタフィジックの正会員ではありませんが、その外堀あたりにはいる人間で、パリの友人たちの何割かは会員です。コレ―ジュ・ド・パタフィジックは秘密的な組織で、作家のアルフレッド・ジャリの提唱した世界を違った角度から描く前衛的な文学運動を行っています。作家のボリス・ヴィアンや詩人のジャック・プレヴェール、映画監督のルネ・クレールなども会員だったことを思えば、かなりフランスの芸術の主流に位置する運動であることは間違いがないと言えるでしょう。そんな中、とにかく、レーモン・クノーの人気は下がることはありません。

 

 ルイ・マルが監督した映画のトレイラー。

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