「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

「ポルノグラフィックな関係」 長い間やりたかったセックスの形

  行き釣りの恋、というと、ちょっと悪いニュアンスがあるのではないか、と思いますが、「ポルノグラフィックな関係」というフランス映画はまさにそんな関係の男女を描いた傑作だと私は思っています。一言で言えば不特定多数の出会い系サイトみたいな媒体を通して、互いに相手の本名も職業も背景も知らないまま、セックスの志向性だけで相手を選んで、待ち合わせて、互いに気に入ればホテルでひと時、愛しあう、という関係の男女が主人公です。主演は熟女と言ってもいいようなナタリー・バイと共演にちょっと癖のあるセルゲイ・ロペス。二人はそんな風に出会って、ホテルでセックスをするのですが、ナタリー・バイの演じる女性は恋愛ではなく、セックスがしたいのですね。夫と死別したか離婚したらしいのですが、夫とセックスする時は自分の心に秘めている理想通りに振舞うことができなくて、ずっと自分のやりたいセックスを抑圧してきたのです。そんな彼女が、今、10歳くらい年下の男と出会って、過去に妄想してきた体位を、騎乗位をやってみる。相手の私生活についてはまったく知ることもなく、そこにコミットすることもなく、ただセックスをするだけの、セックスを探求するための関係です。騎乗位なんて、何十年もフランスで夫婦でいて一度もやったことがなかったのかなあ、などと思う人もいるかもしれません。その時のナタリー・バイの真剣さに打たれるんですね。心が震えながら裸になって男に望みを語りかけている感じが伝わってきます。

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  ではこの映画はポルノ映画かと言えばそうではないんです。裸のセックスシーンを延々と映している映画ではないんです。セックスのシーンはもちろんありますが、その間にサスペンスがたっぷりあって飽きさせない構成です。二人は互いに相手の電話番号も住所も知らなくて、別れる前に次の出会いの時間と場所だけを決めて別れていくのです。だから、もし何かの都合で出会いそびれたら、はぐれてしまって二度と会えなくなる可能性が高い。ホテルに行く前にカフェで待ち合わせて、そこでコーヒーを飲み干してホテルに出かけます。ことを終えた後、ホテルを後にする二人の関係はこの先どうなっていくのだろうか、恋に発展したり、結婚を望んだりしないのだろうか。そういう心の揺れがしっかりと描かれていて、そこに非常な密度があってドキドキハラハラして面白いのです。

  もう1つ面白いのは、この映画がドキュメンタリータッチを取り入れていて、ところどころに取材記者が二人に別々の場所で、インタビューする映像が挿入されます。「彼女の体を見て、子供を産んだことのある女だと感じた・・」みたいなコメントが挿入されます。つまり、こうした出会い系サイトを通した関係を記者が取材しているというスタイルになっていて、そのインタビューが時々、挟まれて話をうまく進めていきます。もちろん、それ以外はドラマ的に撮影しています。この映画の何に打たれたかというと、ナタリー・バイのひたむきさです。ロペスはまだ若い男で、ナタリー・バイよりも人生の時間もたっぷりあり、ある種の余裕を感じさせます。でも、ロペスの独特のキャラクターが活かされていて彼女に愛していると言われて、感じ入って涙をふとこぼすシーンがあります。そういう意味では珍しい映画であり、素晴らしい劇になっていると私は思いました。