ツィッピー・リブニ(Tzipi Livni)というイスラエルの女性政治家について今朝書きましたが、補足を。この人が先述のシャロンが最後に作った中道政党のカディマを出て、Hatnua(運動)という新党を結成したことも書きましたが、この党は党首のリブニも含め、2019年のイスラエルの総選挙に出馬せず、世論調査の低迷から凍結みたいなことになってしまったようです。その一因は前回の選挙で野党連合を結成した労働党から連携をしない旨を告げられたことにありました。
Hatnuaでリブニがやりたかったことは何だったのでしょうか?以下は結党した2012年の記事です。民主主義を取り戻すことが狙いだとしています。
結党時の2012年11月の記者会見の時、リブニは二国家併存を前進させること、ウルトラオーソドックス(宗教極右)にも平等な兵役義務を課すこと、若い人たちが尊厳を持って生きることができる機会を創出すること、などと語ったそうです。
ウルトラオーソドックスの人々が兵役義務を免れていることフランスのTV局のドキュメンタリー番組でも近日見たばかりですが、リブニは宗教原理主義を否定して、世俗主義を掲げています。この「運動」が結果的に行き詰まってしまったことはイスラエル政界に何が起きているのだろう、とさらに私の関心を呼ぶのです。
これはロイターの2019年の記事で、労働党側がHatnua党との選挙連携をしない旨を共同記者会見で突然語った時の模様を記しています。Hatnuaの党首リブニはかなり狼狽した模様で、この後、この選挙からHatnua党候補が全員離脱して野党票が割れない配慮を行ったのでした。イスラエルの国会(クネセットと呼ばれる)議員は総勢60人で一院制です。当時、Hatnuaは5人議員がいました。5人と言えば少ないですが、労働党も19人なので、その意味では5人の持つ意味は大きな意味があったはずです。最大のリクードが30人でした。
イスラエルの政治というのは一見、遠く隔たった話題に思えるかもしれませんが、イスラエルは米国に直結しており、その意味で中東全体あるいは日本にも日米安保という「てこの原理」で波及する大きな震源です。