「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

米消費者物価指数が5%高騰  何が起きているのか? 

 米国で消費者物価指数が昨年と比べて5%も上昇しているためにインフレ加熱の懸念があるのかどうか、というニューヨークタイムズの記事を注意深く読みました。前にも消費者物価指数は1つの物価でなく、指標となる様々な商品の価格変動をまとめて指数にしたもので、物価の変動を判断する時に用いられる指標です。

 前にも書きましたが、米国内のドルの流通および景気を管轄する連邦準備制度(短縮してFed, FRSとも書く)理事会では2%のインフレ率を理想として、その枠組みで完全雇用に近づける努力をしてきました。短期的なスパンで見ると、インフレ率と失業率はトレードオフの関係があります(失業率が下がると、インフレ率が上がる関係)。ですから完全雇用(失業率0%)を実現しようとすると高いインフレ率を招いてしまうので、インフレ率を2%くらいに保ちながらせいぜい4%くらいの失業率がベストだということも前に書きました。失業率は前回の調べでは6%と、新型コロナウイルスで低迷する以前の状況まで約2%の乖離(トランプ大統領時代の2020年2月は失業率は4%を少し切っていた)、通常の許容値までも1%程度に迫っていました。しかし、ここに来てインフレ率が5月に5%にまで加熱すると、物価が高く感じられるため、もし庶民の収入がインフレ率の高まりと同等の上昇をしていなければ、消費が低下する要因になってしまいます。

www.nytimes.com

  ニューヨークタイムズの記事では消費者物価指数が5%上昇した背後には政府の大型景気対策(巨額のインフラ投資政策)が潜んでいて、資金が市場や家計に流入したために(あるいは今後するため)需要が跳ね上がると一方で、物資などの供給が新型コロナウイルスに起因する低迷によって追いついていない、つまり需給関係が乱れているのだという見方を紹介しています。もしそうであるなら、ワクチン接種によって稼働状況が改善すれば供給も増える結果、価格は低下していくはずです。

  一方、共和党は政府の大型公共投資が米経済にインフレの悪影響を与え、消費を下げ、さらには企業の雇用も低迷する、と言ってホワイトハウスを攻撃しているようです。ホワイトハウスでは景気の回復基調に伴う移行期の一時的現象に過ぎず、インフラ投資計画のような長期的計画に影響を及ぼすことはないとしているようです。

 記事では来週、Fedの理事会があり、2018年にジャネット・イエレン元理事長(現在の財務長官)の後任となったJerome H. Powell 新理事長の裁量が注目されるとのこと。

  

   こちらは米政府U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICSの統計です。業種別に昨年からの価格変動をグラフ化したもので(グラフ化したのは交通関係など一部業種と全体のみ)ここから交通関係(というより「移動」関係)、ガソリン価格や航空運賃、ホテル代などが急激に高騰していることがわかります。財とサービスで総合すると(真ん中あたりの青い実線です)2020年4月との比較で4.2%物価が上がったことになります。 

  先ほどの交通関係の価格が急上昇したのは今年、バイデン大統領に変わってからです。自家用車とトラックのレンタル価格については、昨年1月のまだ感染症騒ぎが起きていない時点からいったん低迷して回復した後に、今年に入ると逆に高騰に転じています。家庭の食品については1.2%とそれほど高くなっていないものの、果物と生鮮野菜は3.3%と上昇しています。一方外食は全体で3.8%上昇しています。www.bls.gov

f:id:seven-ate-nine:20210611164206p:plain