正直申しまして、まだリナ・カーン氏の論文を詳細に読んでいませんが、独占禁止法を専門とする30歳前後の若き法学者ながら、イエール大学ロースクールのサイトで発表した独占禁止法とAmazonなどのオンライン企業の関係を探った論文
Amazon’s Antitrust Paradox
が15万近いアクセスを集めるというこの手の論文では珍しい大ヒットとなり、当時は無名でしたがワシントンDCの政界にも知られるようになり、とうとう本当にバイデン大統領にAmazon対策の切り札として抜擢されるに至ったということなのです。
リナ・カーン氏を一躍有名にしたのが下の論文で、公開されています。この中で、米国の独占禁止法取り締まりがなぜAmazonに甘かったのか、という理由を歴史に探り、その基準を変える提案を述べています。つまり、オンライン時代には「独占」という現象をオンライン取引の構造から総合的にとらえる必要があるというのです。Amazonが独禁法を免れたのは、どこよりも安値で商品を売る、という意味では消費者にメリットがあるわけで、その限りで独占禁止法で取り締まる理由がないという風に考えらてきたのだと言います。しかし、Amazonが世界でどれほど独り勝ちしているかは知らない人はいません。単純に安値で売っているから良い、というだけではなく、それが市場全体にどんな影響力を行使しているかを見つめる必要があるというのです。ですので、いったいこの先、米政府がどのような手を打っていくのか注目されます。それいかんではこの人政界の大物になるかもしれませんね。両親がパキスタン系で英国を経て米国に移住したという人です。
ついにホワイトハウスから声がかかりました。連邦取引委員会(FTC)は独占の禁止など不公正な競争を取り締まる役目を負っている政府機関です。このように若くして才能のある人が第一線の司令塔に採用される、というのはすごいです。カマラ・ハリスの副大統領への抜擢と言い、こういうところが面白いですし、米国のダイナミズムを生む背景でしょう。