「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

独占や不公正競争を取り締まるFTC議長に抜擢された32歳のリナ・カーンの論文<Amazon’s Antitrust Paradox>の卓越 

 昨日、紹介しましたリナ・カーン(32)が4~5年前に発表した論文Amazon’s Antitrust Paradoxを読んでいます。半分くらい読みましたが、まずとても面白い。要は本来、独占や不公正競争を取り締まるために19世紀末に法制化されたシャーマン法などの一連の法律が1970年代あたりにその解釈が大きくゆがめられた、というのです。もともとはご存知のように企業が一定以上に市場を占有したり、一定以上の力を持って市場を統制するようなことがないように力を分散させることが趣旨だったにも関わらず、1970年あたりから、解釈を一変して、製品やサービスが安くなるなら、消費者の福利にかなうわけで、それなら企業規模がどのくらいで、市場をどのくらい占めていようとも問題なし、という風に変化したのだそうです。こういうわけで巨大なシェアを占める企業が野放しになってしまった。その解釈をゆがめた張本人はいわゆる「シカゴ学派」つまり、新自由主義の拠点となったミルトン・フリードマンらの経済学派であるとリナ・カーンは歴史をたどって説明しています。そしてフリードマンたちの学派がレーガン大統領と組んで最高裁の解釈をゆがめ、その流れが今も滔々と続いているのだ、と。だからこそ、本来の法解釈、つまり立法の原点に戻れ、と言っているのです。この論文、読みやすいですし、論理が明快で、筆の運びも丁寧で余計なものもありません。見事です。15万近いアクセスがあったというのはよくわかります。将来、大統領になるかもしれない弾でしょう。1970年代以来、最も大きな知的な波が起きている、これが私の第一印象です。しかも学会というコップの中の嵐でなく、彼女はGAFAを左右できる大きな政治的パワーを持つ地位にバイデン大統領から抜擢されたのです。この数年で世界はまた大きく旋回するかもわかりません。

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