「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

タリバン支配に復帰したアフガニスタン:フランスの哲学者Mathieu Potte-Bonneville氏が見るフランスの言論

 フランスの哲学者マチュー・ポット=ボンヌヴィル(Mathieu Potte-Bonneville)氏が今、世界で話題になっているアフガニスタンに関して、SNSで次のようなコメントを発信しています。
 
Jusqu'ici, en France, les contempteurs de "l'islamo-gauchisme" et de la "culture woke" pouvaient, d'un même souffle, accuser au nom des droits des femmes les progressistes de faire preuve d'une indulgence coupable envers l'Islam, et leur reprocher de l'autre main de prêter une attention excessive aux revendications des femmes et des minorités.
 
(これまでフランスで「イスラム主義=左翼主義者」とか「culture woke」(ジェンダーや人種の平等を主張する人々)といった言葉で(研究者や政治運動家らに)軽蔑を投げかけてきた人々が、同じ息で、今度は女性の人権の名において、進歩派に対してイスラム教に対して非難されるべき寛大さを示してきたと糾弾しています。また一方ではそれらの人々が過剰に女性やマイノリティの要求に配慮しすぎたと言っても非難する事態になっています)
 
Déjà périlleux, cet exercice d'équilibrisme va devenir singulièrement complexe s'il leur faut, dans le même temps et afin de maintenir nos frontières fermées, expliquer pourquoi nous ne sommes pas tenus de prêter l'assistance qu'elles nous demandent aux femmes victimes d'un régime se revendiquant de l'Islam radical.
Pour les amateurs de contorsionnisme, vous verrez : nous allons vivre des semaines intéressantes.
 
 (すでに危険な、この軽業師的ふるまいは、場合によっては非常に複雑なものになり得ます。と同時に、フランス国境を閉鎖しておくため、なぜ原理主義を標榜する政府の下で被害にあう女性たちに手を差し伸べられないかを説明するのです。
 曲芸が好きな人々は、これから興味深い数週間を過ごすことになるであろうことがわかるでしょう)
マチュー・ポット=ボンヌヴィル
Mathieu・Potte-Bonneville
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 上のコメントについて。前にフランスでイスラム文化を研究したり、カルチュラルスタディーズという領域を研究したり、あるいは左翼的な研究者たちが、一斉にイスラム急進主義をフランスで広めていると批判を浴びたり、甚だしい場合は死の脅迫さえされたことがありました。私のブログで何度か以前取り上げました。この問題が、あれから半年ほどたった今、アフガニスタンタリバンによって支配されたことを受けて、再燃しているのです。「ほら、言わんこっちゃない、イスラムの奴らは信用するな」みたいな形で。タリバン批判の刃でフランス国内でイスラム文化に親和的だった人々を攻撃しているということでしょう。それでは、女性の権利を尊重せよ、と闘ってきたような人々をも彼らは批判していたはずなので、そこに自ずと矛盾が生まれてくるのです。
 

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