全米の失業率は毎月、米国の労働統計局(BLS)が発表していますが、8月20日発表の数字では5.4%でした。これはまだトランプ大統領時代でCOVID-19の影響の出ていなかった2020年初頭の4%未満と比べると少しだけ高い数字です。数字だけ見ると、もう少し失業者を減らせる余地がある、ということです。
そのため、共和党知事の州は連邦から支出される失業手当の割り増し分を受け取らず、むしろ、失業者の待遇を低めにとどめることで失業者は職探しに真剣に取り組む、というアプローチをとりがちだ、とポール・クルーグマン(経済学者)がニューヨークタイムズで述べていました。とはいえ、クルーグマンによると、失業率の割り増しをキャンセルしたからと言って、割り増しを実施している民主党知事の州に比べて、失業率が有意に改善されているとは見えないと述べています。
クルーグマンは「私見」とことわりながら、失業率がフルに下がり切っていない理由は、COVID-19で失業給付を受けて自宅で過ごすことで、以前の仕事を客観的に見つめ直す機会を得て、それまでの低い報酬やよくない労働条件などが改善されなければ、もう前の職に戻りたくないと思う人が少なくないのではないかと考察しています。クルーグマンのこの推察は、トランプ時代の低失業率はいやいやながらも職についていた人々が一定数存在していたという推察にもつながります。
中でも通勤の苦痛を感じている労働者が少なくないのではないかとクルーグマンは考えています。COVID-19でテレワークに移行して、一番大きな違いがそこにあります。もし米国でそうであるなら、日本ではもっと潜在的に今までの労働に対する感覚のずれがあるのではないでしょうか。これを書いている私の「私見」も加えるなら、テレワークに移行して一番良かったのは自宅で料理を作る余裕があったことでした。都心に毎日働きに出るようになると、必然的に外食が増えるわけですが、この時期、開いている外食店も限られていて、好きなものが食べられない、あるいは、食費が嵩むというような食に関する環境がぐっと下がることを感じさせられます。
話を米国に戻すと、テレワークで、せっかく新しい可能性が開けてきたと思っていた人々が、元の通勤の暮らしに戻るのを拒んでいる、というのがクルーグマンの私見です。