「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

米製造業のリショアリング  製造工場がコロナで再び米国内へ

   ニューヨークタイムズの以下の記事は日本人にとっても他人事ではない重要な問題を伝えています。工場の空洞化、生産施設のオフショア化の問題です。冷戦終結後、日本の生産施設が次々と中国に移設された結果、日本国内の労働者の賃金が低下していったのは記憶に新しいところです。それまで戦後ずっと右肩上がりの給料だった常識が覆された瞬間で、まさにこれこそ、驚きでした。私が映画の学校を卒業して世に出たのは1992年でしたが、まさに日本がどんどん貧しくなっていった時期でした。貧しくなったと言っても、グローバル化で海外から安くて美味しい食材が入ってきますし100円ショップなどもできたので、それまで知り得なかった食材に出会えたという局面もありますが、全体的には空洞化によって労働者が不安定な雇用にさらされたり、低賃金が当たり前になったりしていきました。ですので、工場をもう一度、国内に戻すためにはどうしたらよいのか?という問いかけを私はよく自問しました。とにかく製造業が日本では稼げる産業だったわけですから。そして、米企業が中国から工場を呼び戻す努力をしている現場をオバマ大統領の時代にTV取材したこともあります。以下の記事は、コロナ禍が皮肉にも米製造業にリショアリング(工場を国内に戻すこと)の流れを作り出したことを伝えています。

www.nytimes.com

  この記事では、コロナ禍でサプライチェーンが断絶し、生産が滞るなどのトラブルが、生産コスト以上に大きな問題になりつつあり、確実に生産=販売の流れを維持するために米国内や隣国のメキシコなどに工場をアジアから呼び戻す動きが起きていることが示されています。さらに、地球温暖化対策が拍車をかけて、化石燃料を消費する長い輸送をやめる動きも、リショアリングの後ろ盾となっているとされます。食の世界では地産地消と呼ばれて、このことは従来から訴えられてきましたが、ようやく米国の製造業も動かし始めているようです。ハイテクや高度のテクノロジーを必要とする工場ほど国内回帰がしやすく、人手を大量に要する工場ほどなかなか米国内に戻せないという、リショアリングが製造ラインの違いに影響されることについても触れています。記事では実際にリショアリングの労働者数への影響が顕著に見えてくるのは2020年代の末になるだろうという関係者の声を伝えています。

 米国にとってメリットは、日本よりも高齢化が進んでいなくて、製品を購入する市場が国内にある、ということがあります。この点、移民を受け入れてきた国ならではのダイナミズムを感じます。