先日、ニューヨークタイムズが報じた米製造業の国内回帰についてお伝えしました。これはつまりコロナ禍でアジアでの製造拠点から製品や部品の流れが滞ってしまい、米国での流通や生産に影を落としていることから。ドイツの放送局DWもこれについて報道しています。部品が滞ってしまったことや石油価格の高騰によって10月の生産者の時点での製品価格は8.6%も上昇したと伝えています。記事ではGMがバッテリー生産工場を米国内に建設する予定で、USスティールも新工場を海外に立てる予定だったのを米国内に変更、ロッキードやGEなどもその流れに続いて検討しているようです。インテルも米国内に新設することにしたようです。業界のリサーチによれば、こうした企業は1800社あまりにおよび、1年間で米国内に22万人の雇用を創り出すとのこと。10年前にオバマ大統領がリーマンショック後に自動車メーカーなどを再建するために必死で努力し、税制支援などしながら製造業のリショアリングを進めたにも関わらず当時はせいぜい6000人の雇用が生まれた程度。それも全米労組が様々な待遇カットに応じて経営陣と協力体制に転換することが必要でした。その意味では今回のコロナ禍は業界の構造レベルで、40年ぶりに変化の波が訪れている模様です。
そして、今、大統領がバイデン大統領であり、まさにオバマ大統領の副大統領だっただけに、製造業の国内回帰は選挙戦でもテーマの1つとして語られたことでした。バイデン大統領は、付加価値の高い製造業の国内回帰と環境対策を軸とした新しい製造業の創出こそが中流階層の拡大をもたらし、米国の格差を縮小できると考えています。その意味ではコロナ危機によって生まれたチャンスを、バイデン大統領は必ず活かそうとするはずです。
日本がこの状況から、どのようなヒントを得られるかと言えば、90年代からグローバル化で輸入に頼ってきた国内市場に、新しい変化を起こせるかどうかがカギとなるでしょう。