P・J・オロークが死んだ、と言っても日本ではほとんど関心がもたれないでしょう。しかし、1980年代末あるいは90年代半ばまでは、知る人ぞ知る存在だったかもしれません。アメリカのコラムニストで、コラムという「文化」が日本で紹介されたのは1970年代から1980年代にかけて、ボブ・グリーンとか、マイク・ロイコなどのアメリカのコラムが次々と翻訳出版されて、紹介されたことによります。当時は、バブル経済が崩壊していなかった時代あるいは、まだその残りの熱があった時代で、アメリカの豊かさの文化的象徴という風に感じられたものでした。オロークもまたコラムニストとして日本で何冊か翻訳が出たはずですが、彼の持ち味はユーモアあるいは風刺で、またマイアミの地方紙が舞台になっているという点でもちょっと異色の存在でした。そのスタイルもまた非常に若々しい印象でした。その彼が今月亡くなったことを知ったのですが、74歳でした。
オロークのコラムは細かいことはもう全然私は思い出すこともできないのですが、ニューヨークタイムズの追悼文を読むと、かなり重要な位置づけになっていたことを知りました。特に保守陣営、共和党支持者の側に立つコラムニストだったようです。ただ、それでも共和党の政治家も風刺していたとされ、そういう意味では多くの人から信頼されたのでしょう。私は米民主党の陣営に立ちますが、それでも共和党がなくなったらいいとは思いません。共和党がなくなって、民主党の一党支配になったら、必ず腐敗するわけですから。その意味では保守陣営のコラムニストも重要です。日本の自民党支持者の方々も、一党支配がいかによくないか、ということをソ連の歴史や中国の歴史などからそろそろ学んでほしいと思います。