以下はシカゴ大学のリアリズム派の政治学者ジョン・ミアシャイマーによるウクライナ問題への講演(2015年)。NATOとロシアの間に、勢力のバッファーゾーン(緩衝地帯)を設けておくことがNATOにもロシアにも、ウクライナにとっても良いのだと歴史をひも解きつつ語っています。NATOとロシアが国境を接してしまうと、一触即発になってしまうと説いています。ウクライナを緩衝地帯にとどめつつ、少数民族の権利とウクライナ語を守り、経済支援をロシアと共同で行うなどすることが、平和を守ることになると語ります。
私はプーチン大統領の暴君ぶり、という文脈でこの出来事を見ていたら本質がわからなくなると思います。「独ソ戦」という本がベストセラーになったように第二次大戦でソ連はドイツの侵略と戦い、2000万人以上の国民が兵士も市民も含めて死亡しています。甚大な惨事です。NATOは自分たちが民主主義の側に立っていると思っているかもしれませんが、長い歴史の中ではナチズムに侵されて、突然世界の侵略を始めることも十分に起こりえることです。ロシア人は19世紀初頭のナポレオン戦争の時もフランス軍に侵略されています。ですから、歴史を見つめることなくして、この問題に解決はないと思いますし、ミアシャイマー教授の考え方もまさに歴史と戦略の双方を踏まえたものだと思います。