D.W.グリフィス監督の「國民の創生」(1915) を見て、愕然とした。とくにその第二章である。人種差別主義者の殺し屋集団KKK(クークラックスクラン)を英雄視するとは。「イントレランス」(1916)が興行的に失敗し、「國民の創生」がヒットしたという事実はなんとも悲しい。
この映画は南北戦争前夜からその直後までの揺れ動く米国を描いている。第一章はそれほど悪くはない。黒人解放を目指す北部と独立して奴隷制を維持しようとする南部との間で戦闘が繰り広げられるが、この映画は北部と南部の富裕層の2つの白人家庭を中心に描いている。南北戦争中は敵味方に分かれてしまうが、北軍の勝利で黒人が解放されたのちは、今度は南部で黒人による白人に対する圧政が始まり、それとの闘いをKKKの視点から描いて、なんとKKKが2つの家族を黒人たちから救出してめでたく終わるのである。
グリフィス監督にとって正義とか、真実は白人の中においてのみ存在することなのだろうか。この映画の最大の欠陥は黒人の登場人物の中に誰一人共感できる人間がいないことである。
以下は、この映画のポスターということで、十字架を掲げて馬上にいるのはKKKである。前知識なしで見たために、本当に驚いてしまった。