ニューヨークタイムズのこの記事ではロシア側の外交は見せかけに過ぎなかったとして、米側に落ち度はなかったという要人の声を紹介していますが、片方で、NATOがウクライナを加盟させないと言明していればプーチンを説得できたはずだという数人の声を紹介しています。
<In particular, some have said that explicit assurances from the United States that Ukraine would not become a member of NATO might have been enough to satisfy Mr. Putin.>
<“My sense is that Putin was negotiating in good faith and that he would not have invaded Ukraine if the Biden administration had given a written guarantee not to expand NATO into Ukraine” and pledged to stop arming and training Ukraine’s military, said John Mearsheimer, an international relations scholar at the University of Chicago and a prominent critic of NATO expansion.>
ニューヨークタイムズも、私がこれまで引用してきたシカゴ大学の国際政治学者、ジョン・ミアシャイマー教授※の発言を引用して、NATO側の不誠実を批判しています。ニューヨークタイムズがよくここに踏み込んだなと私は感心しました。要するに、米国とEU首脳はロシアと外交するように見せかけて、実はロシアの一番欲しがっている「保証」については何も答えなかった、そのことこそが交渉が見せかけに過ぎなかった本質であるとしています。日本のメディアではどう報じられているのでしょうか?イラク戦争の時のように、独裁者の悪のみを叩く、という風になっていないのでしょうか。シリアでもリビアでもずっと西側覇権国家群がやってきた偽善です。
ニューヨークタイムズのこの記事は最後にウクライナのゼレンスキー大統領がプーチン大統領に、NATOに加盟しない選択肢もありうることを語りかけたTVメッセージについて言及して終わっています。プーチン大統領の反応は未だないそうですが、しかし、この言葉は大きな可能性を秘めており、Michael Crowley記者がこの優れた記事で最後に持ってきた意味が浮き上がります。瞠目の記事です。
※ジョン・ミアシャイマー教授の講演(2015年) これは以前の講演だが、ミアシャイマー教授の基本的認識は変わっていない。