「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

ロシア出身の作家アンドレイ・マキーヌ(ゴンクール賞)の意見がまっとうすぎる

  ロシア出身でフランスで活躍している作家、アンドレイ・マキーヌのウクライナ戦争に対する意見がまっとうすぎて感動すら覚えた。マキーヌは「フランスの遺言書」という小説でゴンクール賞を受けたロシア出身の作家で、この本はフランス人を祖母に持ったソ連の少年の自伝的小説です。彼にとってフランスとは自由の地であり、フランスから渡ってきた祖母を通してフランスへの憧れが描かれていたと記憶しています。で、マキーヌ氏が今、ロシア軍のがウクライナ侵攻に関して述べている事ですが、その要点は<ロシアのプロパガンダは問題だが、NATOプロパガンダも問題だ>、というものです。この問題を彼は極めて疑わしい「冷戦終結」以後の出来事から歴史的に冷静に分析しています。以下はフィガロ誌の記事ですが、タイトルは「ロシアに唾をはきかけてもウクライナを助けることにはならない」

www.lefigaro.fr

  マキーヌの意見を筆者はSNSでフランス人の知人から教えてもらったのですが、冷戦終結後のロシアとNATOの関係を歴史的に述べ、米ロ間の核兵器交渉でも米側が一方的に打ち切るなど、NATOは本来は冷戦終結でその存在意義がワルシャワ条約機構同様に消滅したはずなのに実態はアグレッシブにロシア目指して加盟国を増やしていったことをまずあげています。ロシアは冷戦終結で当初、資本主義に経済を変えて西側社会に融合しようとしており、エリツィン時代にいろんな試行錯誤を行いました。また、プーチンになってから当初はブッシュ大統領の9・11以後のアフガニスタン侵攻にも協力したりして必ずしも反西欧的にふるまっていたわけではなかったと言っています。プーチンの登場当初も現在とは印象が別だったとマキーヌ氏は振り返っているのです。さらに、ウクライナのドンバスでは過去8年間の内戦で1万数千人の死者が出ていることをあげています。

  まあ、そんな風に述べつつ、ロシアのプロパガンダはよくないが、NATO側もプロパガンダをメディアを使って流し、ロシアと同様に実質的な検閲を行っていると言っています。たとえばフランスにおいてロシア国営メディアのRTにアクセス不能にしたり、ロシアのバレー団やロシア関係の文化的事業でも打ち切っていて、これも検閲ではないかと言っているのです。要はロシア文化にアクセスできないようにするのは自由な国の取る措置なのか?と疑問を投げかけています。自分はソ連に生まれて、「プラウダ」しかなかったので、自由なフランスのメディアにあこがれたものだが、現在のフランスのメディアは本当に自由があるのか、と言った疑問を投げかけているのです。

  イラク戦争であれ、リビアカダフィ政権討伐であれ、私の経験からもNATOプロパガンダは恐ろしいほど主流メディアを覆い尽くして、「西側」に報道の自由が存在しているのかと思わせられます。多様な意見や記事が流通することができない社会なのに、自分たちは民主主義の側にいる、正義の側にいる、自由の側にいるという風に思い込んでいるのは、独裁国家のもとにいるのと同じであります。

 マキーヌさんはウクライナ戦争に対する意見を述べるにあたって、フランスのアカデミーを利用したと批判的に書かれていますし、また、そもそもプーチン大統領の登場当初に核管理はプラグマティックなプーチンの方がエリツィンより暴発の可能性が少ないとして評価したために、AFPの記事を通してプーチン擁護文化人のレッテルを張られることになったと述べています。