「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

アフガニスタンではタリバンが女性のブルカ着用を義務化 公務員女性が違反したら即刻解雇 さらに夫も処罰

 5月7日にタリバンが女性にブルカの着用を義務付けました。頭部だけじゃなくて、頭からつま先まですっぽり覆う衣装です。ルモンドの報道ではここでいう対象となる女性は、幼すぎず、老いすぎていない女性を指します。すなわち、生殖の対象、セックスの対象となる女性ということになるでしょうが、何歳とは具体的に書かれていません。来月、フランスでは国民議会選挙がありますが、極右政党の国民連合は公共の場でのスカーフの着用を禁止する政策を掲げています。

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 今、この時期でのタイミング。いったい、この2つのことに関係があるのでしょうか、ないのでしょうか?中東とフランス、一見遠いように思えますが、国民連合はムスリム移民の排除を政策に掲げています。党首のマリーヌ・ルペンは4月の大統領選で42%まで善戦し、連続で大統領候補の決戦に残る政治家になっています。そのルペンはフランスで公共の場でのイスラム教徒の女性のスカーフの着用を禁止する政策を掲げているのです。ですので、私はタリバンがこの時期にブルカの着用を義務化して、マスメディアでアピールしたことはフランスを中心とする西側世界への挑発ではないかと感じられるのです。

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  ちなみにマリーヌ・ルペンは、上の記事によると、ユダヤ教徒の男性がキッパと呼ばれる小さな帽子を公共の場で着用するのは「ユダヤ教徒は私たちの仲間だ」という理屈で容認しています。また、今年になってウクライナの戦争で難民が出てくると、ウクライナ難民はムスリム難民と違って仲間なので受け入れて良い、という判断を伝えています。イスラム教はカトリックに告ぐ二番目に信者の多い宗教ですから、フランスの中で少数派を分断することで、多数派の票を取り込む期待を持っているのでしょう。

 皮肉なことではありますが、アフガニスタンのジハーディスト(イスラム戦士)に兵器を与え、訓練を施してソ連と戦わせたのは米国でした。その米国は20年間、占領統治した後、昨年完全に撤収し、今はウクライナへ武器を供給しています。国際ニュースは1つ1つバラバラに見ていたのでは意味がつかめません。たとえて言えばモナリザの絵画をジグゾーパズルにしたものがありますね。その一片一片だけを個別に手にしたのではその意味を理解できないのです。これもカギとなるのは兵器産業です。戦争の種をまかないと武器は売れません。その意味で、大統領たちは最良の営業マンです。フランスもNATO軍として2014年までアフガニスタンに派兵していました。

  今、与党は日本の軍事費をGDPの2%まで拡大したいと考えています。昨年の世界の軍事費は過去最高額を更新しました。ウクライナにロシアが侵攻する前の段階で、です。新型コロナウイルスと軍事費、関係があるんでしょうか?景気対策と関係しているのではないのでしょうか。コロナで世界中みんな困っている時に、殺人の兵器にかくも大量の税金が使われることは残念でしょう。

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