本日、年金改革案に反対する労働組合と市民による大規模デモが行われるフランス。2022年の下院議員選挙で議員数を減らして過半数を割ったマクロン大統領の「前進」は、ボルヌ首相によって49-3という下院での議論と評決をすっ飛ばして予算案や法案を作成する非常手段を続けてきた。この年金改革案でも野党の反対が強く、法案を通すなら、またまた49-3という下院での議決を飛ばすしかないだろう。しかし、これほどの重要法案を国民の代表である下院の議決をすっとばして通してしまえば、もはや政府は国民の信頼を永久に失ってしまうだろう。そもそも、世論調査でも圧倒的多数の国民が反対しているのだ。 そこで、マクロン大統領は大統領の権限を用いて、2027年に予定されている下院議員選挙を前倒しして、下院を解散し、選挙をそれまでに行うと示唆した。過去の例では、総選挙によってさらに国会でのパワーを失って窮地に陥ったケースもあるとされ、マクロン大統領にとってもリスクの高い判断となる。大統領が解散権を行使できるのは選挙から1年後である。前回に続き、今回の大規模ストライキが成功すれば、ますますボルヌ首相は国民の力を無視できなくなるだろう。 ※INFO EUROPE 1 - Emmanuel Macron envisage une dissolution de l'Assemblée avant 2027 ヨーロッパ1の報道では、マクロン大統領はル・ポワン紙のインタビューで下院解散の意向を語ったとされる。ヨーロッパ1の記事では、大統領の側近たちは皆賛成しているらしく、もし選挙で過半数を取れない場合、最もありえるのは極右の国民連合が過半数を奪う可能性だと考えているそうだ。その場合は、マリーヌ・ルペンを首相に任命して、マクロン大統領とルペン首相という保革(?)のコアビタシオン政権となる。そして、そうなると2027年の大統領選挙前にルペン首相の政策を叩くこともできて、大統領選で彼女のパワーを削ぐことができるという読みもあると書かれている。マクロン大統領は、極右への防波堤だというアピールで左派の支持者からも票を集めてきたのだが、いよいよここに来て、極右政党とのコアビタシオン政権を結成することもマクロン大統領たちが視野に入れていることが判明した。 |