「ニュースの三角測量」

ニュースを日英仏の3つの言語圏の新聞・ラジオ・TVから読んでいきます。アジア、欧州、アメリカの3つの地点から情報を得て突き合わせて読むことで、世界で起きていることを立体的かつ客観的に把握できるようになります。それは世界の先行きを知ることにもつながると思っています。時々、関連する本や映画などについても書きます。

安倍時代の残照 真実追及への執念の激減 ~下山事件以来の解決なき迷宮入り事件群~

 

これは自分への反省も含めて書いていますが、この10年間、大半は安倍政権のもとでテレビの後退や週刊誌・総合誌の減少などを背景に、真相を知りたいと思うことでもなかなか知ることができなくなってきました。最近、変わったのは安倍首相の暗殺後に旧統一教会に関する事実が次々とジャーナリストたちから報じられるようになったことです。しかし、まだまだ真実探求への情熱はかつてと比べると弱弱しいものです。

  東京新聞が「「戦後の知性主義が日本を破壊した」自宅にメモ 宮台真司さん襲撃事件 死亡の41歳男書類送検」という記事を出しました。

  「捜査1課によると、自宅からメモ帳3冊が見つかり、「学者は一番上にきてはいけない人種」「戦後の知性主義が日本を破壊した」「大学教師なら人に偉そうに説教することを目的にしたらいけない」との走り書きが残されていた。2008年ごろに書いたとみられるが、宮台さんら特定の人物の名前はなく、犯行動機との関連は不明という。」

  これ自体はこの情報が発表される前よりは格段に良いと思うのですが、なんとなくここで幕引きになってしまう嫌な印象を得ます。犯行に及んだ人間像をもっと克明に理解したいと思う人は多いでしょう。たとえば、宮台氏にそんな印象を持ったとしても、あえて犯行に及んだ動機は何だったのか?そのヒントはメモに残されていないのか。この人はいわゆる「ネトウヨ」だったのでしょうか?どんな毎日を送っていたのか。真実に関心のある人なら、とうてい、この程度の記者発表の情報で満足できないでしょう。もっとそこに実在した人間像を描き出してほしい。これだけ世相に不安と暗い思いを与えた重大事件なのだから、犯人が自殺したからと言ってそれで解決では絶対にない。

  私が思い出すのは、都内の図書館で300冊以上の「アンネの日記」が破られた事件です。確か2014年頃。犯人は36歳で無職と書かれていましたが、精神状態が不安定とかで、その後は私の知る限り犯人の動機や犯行に及んだ深層の記事を読んだ記憶がないのです。300冊も同じ本を破っていくのは、並々ならぬ執念であり政治的動機がなかったとは考えにくいものがあります。折しもネトウヨをバックにつけて第二次安倍政権が始まり、長期化して行く頃の出来事でした。

※逮捕の30代男 「アンネの日記破る」関与の供述も(MX)


  かつてなら週刊誌、総合誌がもっとあって、こうしたテーマをルポライターやジャーナリストが追いかけていたものです。駅前の書店で、本の見出しを見て面白そうだったら買っていました。今とは何もかも大違いです。駅前にはノンフィクション書籍や雑誌のコーナーどころか、もう書店もありません。私は今日の文化は安倍時代に侵されて、変質していると見えます。真相を知りたいと言うこだわりが乏しいと思えてなりません。


村上良太


■「第三の敗戦」 報道のグローバル化NHKの怠惰を埋めるかもしれない


  今後は、以下のようなテーマも、BBCやDWなどの外国の放送局に企画を持ち込めば実現できるかもしれません。国民が関心を持ったテーマでもNHKが作らなかったものは、外国放送局にとっては日本進出のきっかけとなりますし、視聴者のシェアの拡大には大きくつなげることができるチャンスとなるのです。NHKにできないものは、BBCスぺやDWスぺに期待したいと思います。

ポスト安倍時代の「Nスぺ」に期待したい特集3題


  以下の安倍首相三殺直後のNスぺはNHKが日本国民をミスリードした歴史的な失敗作。NHKが存在理由があるのか、視聴者に疑問を投げかける番組となりました。10年近く安倍時代が続いた結果、もはやまともな政治ジャーナリズムの番組制作能力が不可逆に劣化しているのではないか、ということです。これはH3ロケット打ち上げの失敗によく似ています。この拙速のつくりと事実のミスリードはなぜ起きたのか?今後はこうした重要なテーマは、BBCニューヨークタイムズ、Viceなどに報じてもらいたいものです。

NHKスペシャルred herring (燻製ニシン) ~核心から人々の目をそらさせる修辞学~